政策と活動
2025年度予算要望
- 2025年度予算編成に関する申し入れ
- 2025年度福岡市予算編成に関する日本共産党の重点要望(389項目)
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- 国の悪政の「防波堤」となり、市政の大もとから見直しを(6項目)
- 医療・介護・障害福祉などケアを支える市政を(69項目)
- ムダな大型開発をあらため、市民の生活・安全優先のまちづくりを(87項目)
- 気候危機打開へ、地域と地球の環境守る先頭に(28項目)
- 物価高騰とコロナの影響に苦しむ中小企業・小規模企業者、農林水産業を支援し、地域経済の立て直しを(23項目)
- 憲法と子どもの権利条約を生かし、子どもを人間として尊重する教育・文化行政の推進を(76項目)
- 子どもの権利が守られ、安心して子育てできる福岡市に(37項目)
- あらゆる分野でジェンダー平等を進める(17項目)
- 憲法の平和・民主主義の理念を福岡市のすみずみに(46項目)
2025年度予算編成に関する申し入れ
2024年12月10日
福岡市長 髙島 宗一郎 殿
福岡市教育長 石橋 正信 殿
日本共産党福岡市議団
団 長 中山 郁美
幹事長 倉元 達朗
堀内 徹夫
綿貫 康代
10月の総選挙で、国民は自民・公明政権に対する歴史的審判を下しました。これは、裏金問題への怒りと同時に、暮らしの困難への無為無策、大軍拡には巨額の税金を使いながら暮らしの予算を切り詰めるなど、経済や外交・安全保障を含む自民党政治の全体に対する不信や怒りのあらわれです。まさに国民が自民党政治に代わる新しい政治を模索し、探求する、新しい政治プロセスが始まったと言えます。この選挙で示された「自民党政治から抜けだして新しい政治をつくりたい」という国民の民意のベクトルに逆行する立場をとるならば、厳しい批判が寄せられ、市民から見放されることは明白です。いまこそ憲法の精神を生かして、国がすすめる悪政から住民を守る「防波堤」の役割を果たし、住民の暮らしと福祉を良くするという自治体本来の仕事をすすめ、地方自治と民主主義を守り、発展させる方向へと市政を転換することが求められています。
髙島市長はこれまで、この自民・公明政権が推進してきた政治に追随するだけでなく、率先して実行する先導役になってきました。今回の総選挙結果は、この髙島市政に対しての審判でもあったと言っても過言ではありません。市長は「都市の成長」と言って大型開発や呼び込み路線を続け、規制緩和をすすめてきました。しかし「生活の質」、つまり市民生活の向上につながっているとは到底いえません。市民のなかでの貧困の広がりや中小零細業者の廃業・倒産などが相次いでいるという市内の現状がそれを証明しています。この市長が進める従来の路線では市民の暮らしの困難を打開することにはつながらず、いまこそ、社会保障の充実や教育の公的負担の軽減、給付の増額など、市としてできることを最大限にやるべきときです。
私たちはこうした立場から、2025年度予算編成にあたっての重点要望を貴職に申し入れます。
2025年度福岡市予算編成に関する日本共産党の重点要望
1、国の悪政の「防波堤」となり、市政の大もとから見直しを
物価高騰が長引くもとで、暮らしの困難がひろがっている。労働者の実質賃金は2013年の自民党政権復帰後の11年間で年収で404万円から371万円へ33万円も減る一方、同時期の大企業の内部留保は200兆円以上膨らみ539兆円に達している。このおおもとには「大企業が儲ければ、それが滴り落ちて国民全体が潤う」という財界・大企業の利益優先の自民党政治があるが、このような時代遅れのトリクルダウン政策は物価高騰から市民の暮らしを守るうえでも、日本経済を再生するうえでも百害あって一利なしである。また、自公政権は2022年末に「安保3文書」を策定し、他国の領土にミサイルを撃ち込む「敵基地攻撃能力」の保有や5年間で43兆円もの軍事費をつぎこむ大軍拡につきすすんでいるが、この動きは国民・市民に更なる負担を押し付けるだけでなく、「軍事対軍事」の悪循環をエスカレートさせ、戦争の危険をもたらすものである。さらには、石炭火力と原発を推進し、大手電力会社による再生可能エネルギーの出力制御を許すといった気候危機打開に逆行するような動きや、「米不足」を招いた農家への減産押し付け、食料主権を放棄するような輸入自由化路線といった自民党農政なども市民・国民の暮らしに深刻な危機をもたらしている。いまこそ本市が国の悪政から市民を守る「防波堤」の役割を果たすことが求められている。
(1)国の悪政から市民を守る
- 500兆円を超えて積み上がっている大企業の内部留保に時限的に課税することで中小企業の賃上げ支援の財源を確保して最低賃金を速やかに時給1500円に引き上げるとともに非正規労働者の待遇を改善し、「1日7時間、週35時間労働制」への移行や時間外・休日労働の上限規制を設けることで労働時間の短縮をはかるよう国に求めること。
- 消費税を緊急に5%に減税するとともに、これまで行ってきた法人税減税を元に戻すことや富裕税などの創設、GDP2%への大軍拡予算の削減などムダづかい一掃で財源をつくり、最低補償年金制度の導入や高すぎる医療費窓口負担の軽減など社会保障を削減から充実へと転換するとともに、教育予算を抜本的に増やすよう国に求めること。
- 新しい需要と雇用を生み出し地域循環型経済の発展をすすめるために、原発ゼロや石炭火力発電からの撤退を決断し再生可能エネルギーを抜本的に増やすことを国に求めること。また、価格保障・所得補償の充実をはかることとあわせて「輸入自由化」路線を転換することで食料自給率を早急に50%に引き上げる計画を持つよう国に求めること。
- 「安全保障3文書」に基づく「敵基地攻撃能力」の保有や5年間で43兆円もの軍事費をつぎこむ「戦争国家」づくりを改め、集団的自衛権行使容認の閣議決定と安保法制を廃止するとともに、対話と協力の外交に力を入れるASEANと協力して東アジア規模の平和の地域協力の枠組みを発展させるよう国に求めること。
(2)市政転換
本市は「都市の成長」を「生活の質の向上」に結び付けるという名目で、大型開発や大型イベントをすすめてきた。しかし、市民の生活は良くなるどころか長引く物価高騰の影響を受けてさらに厳しくなっており、市内中小企業・小規模事業者の経営が悪化し続け倒産・廃業が相次いでいる。また、加齢性難聴者の補聴器購入補助や学校給食費無償化などの市民の切実な願いには背を向け、学校施設の改修や抜本的な水害対策など必要な施策にはお金を使わない、市民に冷たい市政運営がなされている。「天神ビッグバン」・ウォーターフロント再整備などの大型開発、大型イベント優先の税金の使い方を改め、市民の暮らしや市内中小業者の営業を応援し、地域循環型経済へ転換すること。
(3)福岡市基本計画
市長が提案している「第10次福岡市基本計画」では、破たんした「生活の質の向上と都市の成長の好循環」という前期の計画の基本戦略をそのまま踏襲している。また、国連の持続可能な開発目標(SDGs)を掲げながら、「貧困をなくそう」も「ジェンダー平等」も書かれておらず「SDGsウォッシュ」に他ならない。しかもその評価指標はすべて「市民意識」で設定されており、施策の具体的・客観的な達成目標がなく問題である。破たんした大企業中心の都市の成長戦略を抜本的に見直し、SDGsの掲げる目標を基本に、達成目標も「市民意識」ではなく、具体的なものを掲げるよう抜本的に見直すこと。
2、医療・介護・障害福祉などケアを支える市政を
(1)マイナンバー保険証について
マイナンバーカード保険証の運用開始以来、誤った情報が紐づけされている等の問題が全国で多発しているにも関わらず、石破政権は12月2日から紙の保険証の新たな発行を行わない運用を強行した。各種世論調査では70~80%が反対や不安の声を上げており、医療関係をはじめ多くの団体も「医療現場の負担は増大する一方、個人情報や医療を受ける権利が守られなくなる」等として方針撤回を求めている。石破首相自身も総裁選において「併用」を選択肢として示したにも拘らずこれを反故にしたことに対して国民の怒りはひろがっている。国に対して、マイナ保険証の押し付けを中止し、従来の紙の保険証との併用を認めるよう強く求めること。
(2)国民健康保険について
- 本市の国保世帯の平均所得は約83万円と低い水準にとどまっており、所得200万円以下の低所得者がその約82%を占めている。3年半にわたるコロナ禍に加えおさまらない異常な物価高は低所得層が多い被保険者の経済的負担を増大させており、元々重い負担となっている保険料の軽減が強く求められている。しかし市は、「収入未済」や「減免」分等を保険料に上乗せする方式を続け、一般会計からの法定外繰り入れを削減し、今年度の1人当たり保険料は史上最高額となっている。「上乗せ方式」をやめるとともに、国や県の圧力をはねのけ、一般会計からの法定外繰り入れを物価高騰に見合うよう抜本的に増やし、保険料の大幅引き下げをはかること。
- 子どもの均等割分については対象年齢によって免除や軽減に格差を設けることに道理はない。18歳までの全てのこどもを対象にし、全額免除とすること。併せて、国に対して全国知事会が要求している「公費1兆円の投入」で均等割、世帯割をなくし保険料の協会けんぽ並みへの引下げを可能にするよう求めること。
- 現在本市においては到底高額所得者と言えない世帯が年106万円もの保険料最高額を強いられている。賦課限度額の引上げは止め、「応益割」偏重の是正など、逆進的な国保料を生み出している算定式の見直しこそ行うこと。
- 「都道府県単位化」は、国保の構造問題を解決しないまま自治体の主体性を奪い、住民負担増や滞納制裁強化、一般会計繰入の抑制等を強制するやり方であり、すでに大きな影響を生み出している。見直すよう国に求めること。
- 本市の保険料減免世帯比率はコロナ禍の影響が残っていた前年度においてもわずか5.39%にとどまるなど、極めて低い水準にある。物価高騰の影響が拡大し続ける今こそ「所得が前年に比べて30%以上減少」という条件を「前年比20%以上」に改善するとともに、所得減少の場合のみにとどめず中小零細業者や低所得者層の実態に即して適用対象をひろげ、広報を充実させること。また、減免申請については前年度の所得が確定する時期を待たず、保険料確定後のいずれの時期においても見込みで受理し決定すること。
- 国民健康保険法44条に定める失業など所得減少世帯に対する窓口一部負担金減免制度について、本市では適用が12年連続0件という異常な事態となっており、改善が図られていない。「前年度比3割以上の減少」という収入要件等の厳しい条件が付されていることによって、日常的に生活が厳しい人は適用されない等の矛盾が引き起こされており、早急に要件を見直し、困窮者を救える制度へと改めるとともに、ホームページや市政だより等で広報すること。
- 本市における国保料滞納者に対する差し押さえは、わずかな預金132円を差し押さえる事例や公的手当が入る口座を狙い撃ちにしたものも含まれているなど、異常なやり方が横行している。公的手当をはじめ年金、子どもの学資保険さえも差し押さえる冷酷、異常、機械的なやり方はただちにやめること。
(3)後期高齢者医療制度等について
- 福岡県の保険料は全国的に見ても高い水準のまま推移し2017年度から強行されてきた特例軽減の段階的廃止縮小並びに賦課限度額の引上げ、現役世代の負担軽減や少子化対策の財源確保のためとした被保険者の負担割合の見直し等によって、2024・2025年度の第9期保険料は一人あたり9万427円と史上最高額となっている。長引いたコロナ禍に加え、継続している異常な物価高騰と年金引き下げによる生活困難もひろがっており、第9期保険料については剰余金や各種基金を最大限活用し、保険料の緊急引き下げを行うよう広域連合に求めること。また、保険料特例軽減の復活を国に求めること。
- 後期高齢者の医療費窓口2割負担の拡大が強行実施されて以降、一人あたり年5万円以上の負担増となり「受診回数を減らした」「食費を抑えて預貯金を切り崩している」など、受診抑制や生活困難がひろがっている。3割負担への更なる拡大の検討は中止するとともに2割負担を1割に戻すよう国に求めること。
- 無料低額診療事業は経済的困窮者にも医療を保障する重要な役割を果たしている。本市において実施する医療機関を増やすための取り組みを県とも連携し強め、制度の広報を市ホームページだけにとどめず、ポスターやパンフレット等でも広く行うこと。また、国に対して薬剤費への制度適用を求めるとともに、当面他都市でも徐々に広がる独自助成を本市でも実施すること。
(4)こども病院・市民病院
- こども病院・市民病院ともに医師、看護師等が業務量に見合った数になっておらず、職員へ過大な負担がかかることによって人材が流出し医療の質が低下している。人材流出を防ぎ医療の質を維持するためにも処遇改善をするとともに職員を正規で増員すること。あわせて、医師の計画的増員や診療報酬の改善をすすめ、医師の長時間・過密労働の是正をはかるよう国に求めること。
- 独立行政法人化以降、福岡市立病院機構の一時金の支給月額が福岡市と同様ではなく、年間支給月額の累計が合計すると0.8月低くなっている。病院機構に改善を指示すること。
- 病院機構では、職員間のパワーハラスメント等で疾病に追い込まれる事案が度々生じている。これまで起こった事案について、ハラスメントに至った背景など加害者・被害者双方の状況を分析し、再発防止策を強化するとともに、安心して通報できる体制をつくり、事案が起きた場合には被害者への補償をおこなうこと。
- こども病院においては、小児・周産期医療の拠点としての重要な役割を果たす一方、病院機構の方針の下、採算性が優先されている。職員の勤務諸条件を改善し、職員の合意を大切にする民主的な病院運営へと転換するよう指導すること。また、バスのルートや便数を抜本的に増やすようバス事業者に強く要請するとともに、職員の駐車場利用枠を増やすこと。台風など強風時にタクシーを呼んでも断られるため、夜勤明けの職員が帰宅できなくなることがないように病院独自のバス借り上げ等の工夫によって災害時の通常業務に従事できるよう対策をとること。
- 市民病院で検討されている建て替えや移転について、職員への現状報告や説明もなく進んでいる状況がある。職員に随時説明しながらすすめることと。また、地域で医療を受けている住民にも大きな影響があるため、地域住民にも情報を提供すること。
(5)介護保険
- 介護の提供体制の崩壊という危機が進行している。ホームヘルパーなどの介護人材不足、経営悪化による事業所の撤退・廃業・倒産が続出している。特に政府が今年度から訪問介護の基本報酬を減らしたことは大打撃となった。介護報酬の増額、介護職員の待遇改善、介護事業の継続支援のために、介護保険の国庫負担を10%増やして公費負担を現行の50%から60%にするよう国に求めること。
- 第9期福岡市介護保険事業計画では、保険料の基準額は年間8万2788円で8080円もの値上げとなっている。また15段階全てで値上げされ、制度開始時から約2倍以上と史上最高額になった。その結果、本市の保険料は政令市で5番目、県内で2番目の高さになっており、高齢者の生活を大きく圧迫している。市民の暮らしを守るため、市の一般会計からの繰り入れも行い保険料を引き下げることが求められているが、市は「適切でない」と否定的な態度をとり続けている。厚生労働大臣の国会答弁では自治体独自の繰り入れを否定しておらず、あらゆる手段を講じて保険料の引き下げを図ること。また、2024年9月末時点で143名に課している滞納者に対するサービス取り上げ等のペナルティはやめること。
- 2024年4月に3年に1度の介護保険制度改定がおこなわれ、訪問介護事業所の基本報酬が引き下げられた。国はこの引き下げをごまかすために特定事業所加算を作ったが、24時間の連絡体制確保や研修の実施など算定要件がきびしく、大半を占める小規模事業所にとってこの加算を受けることは容易ではない。今回の報酬引き下げによって利用者はさらに負担を強いられ、事業所の経営危機からサービスの提供が減る可能性が高く、必要な介護を受けられなくなる人が続発する危険がある。国に訪問介護事業所の基本報酬引き下げを撤回し、引き上げるよう求めること。あわせて、国が基本報酬を引き上げない間は市独自に訪問介護事業所への支援を行うこと。
- 昨年5月から新型コロナウイルス感染症が5類に変更されたが、コロナによって高齢者が死亡する確率は依然高い。国に対し、コロナに対する医療費の公費助成を元に戻すよう求めるとともに、介護従事者への市の無料スクリーニング検査を復活させること。
- 公益財団法人九州経済調査協会の調査によると、2030年までに介護サービス分野では福岡市で1900人もの人材が不足すると言われている。また第9期計画では介護人材の確保に外国人をあげているが、同調査では、年収の高い関東への流出が想定されており、外国人労働者で賄えるというのは幻想にすぎない。訪問介護事業所や訪問介護員とともに、介護にかかわるすべての職員の処遇改善のために市の独自支援を行うこと。市独自に保育士へ行っている家賃補助、奨学金補助を、介護職員にも実施すること。
- 本市の特養ホーム待機者は2270人である。申込み者の数から「必要度の低い人」を除外する恣意的な判断によって実態より少ない人数に絞り込んだ上に、今期(2024年度~2026年度)における整備計画は190人分という極めて不十分なものになっている。このようなやり方は許されず、希望者全員が速やかに入所できる計画へと見直し、早急に待機者解消を図ること。併せて、小規模多機能施設やグループホーム、宅老所などの基盤整備と公的補助を強化すること。また、「要介護1・2」の特養ホーム入所からの締め出しをやめ、入所条件を緩和するよう国に求めること。
- いきいきセンター(地域包括支援センター)がおこなう総合相談支援においては、年々相談件数が増加傾向で、職員1人が受け持つケース数が108件となっている。また専門職相談員の不足により相談業務が行えないことや、ケアマネージャーの不足により、相談員がケアプランを作成せざるを得ないなどで、業務が正常に行えず市へ委託料の一部を返金する事態がおきている。もともとの低い配置基準を改めるとともに、市独自の財政支援施策を行うこと。現在57ヶ所で中学校区に1つしかない状況を改め、増やすこと。
(6)高齢者
- 高齢者乗車券については、申請書の記入ミスなどでのちに変更しようとしても一切受け付けない対応がなされている。このような対応を改めること。要望の強い所得要件及び利用上限額廃止や、ICカードとタクシー助成券、渡船乗車券などの併用を可能にし、高齢者の移動権を保障すること。タクシー助成券については、1回に使える金額が500円から1000円になったが不十分であり、上限を撤廃するとともに、有効期限をなくすこと。
- 加齢性難聴は高齢者の引きこもり、孤立、事故、そして認知症の大きな原因になり、その対策として補聴器は有効であると専門家も指摘している。しかし、その購入費用は数十万円におよび負担が非常に重く、補助を求める声が広がっている。市は「加齢性難聴は加齢に伴って誰にでも起こり得る」と言いながら、自己責任を押し付け補助金創設にも背を向けている。しかし、誰にでも起こりうることだからこそ行政の支援が不可欠である。福岡市が手をこまねいている間にも実施自治体は広がり、ことし1月時点で238に広がっている。本市でも加齢性難聴者の補聴器購入費補助制度を創設すること。
(7)原爆被害者
原爆被害者の相談事業や被爆証言活動等は本来行政が行うべきものであるが、本市は僅かな補助金で「原爆被害者の会」に丸投げしている。平均年齢が86歳となった当会は自力で事業を維持・充実させることが困難になっており、運営費補助金を増額するとともに人的補助など必要な支援を行うこと。会が取り組んでいる被爆体験を継承するための「語り部」養成事業については広島市や長崎市のように会と連携しながら早急に市の実施事業へと移行すること。また、同じ施設利用団体なのに差別的取り扱いをすることは許されず、障害者と同様に被爆者のふくふくプラザ駐車場使用料を全額免除するよう手立てをとること。
(8)アスベスト
- 「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金の支給に関する法律」では、屋外作業員や対象期間外に被害を受けた人は補償対象外である。また、給付金法による補償基金には、建材メーカーが参加していない。これらの被害者も補償対象とすることや、メーカーによる基金への拠出を実現するよう国に要求すること。アスベスト曝露による健康被害を防ぐための規制強化、労働災害認定基準の大幅緩和、さらに、裁判によらず簡易・迅速に建設アスベスト被害者を全面的に救済する「被害者補償基金制度」の早急な創設などを市として積極的に国に要求すること。
- アスベスト対策を抜本的に強化するために、アスベストアナライザーをすべての解体現場で活用し、含有調査を行うこと。大規模災害時の飛散対応等のため、アスベスト使用建築物のハザードマップを公開し積極的に市民に周知すること。また、市民へのアスベスト被害に対する啓発活動を強めること。アスベストを扱う建設労働者の防じんマスクの普及につとめ、市内業者への購入補助を行うこと。また国民健康保険の特定検診において、職種や経歴に応じてアスベストの影響・被害が明らかになるような問診・検査を行うこと。石綿調査の公的資格制度である「建築物石綿含有建材調査者」などの専門家を育成、職員も大幅に増やすなど総合的なアスベスト対策をすること。
- 吹付けアスベストが施工されているおそれのある民間建築物の解体、建築、補修工事における事前調査やアスベスト除去費用の補助対象を本市は「解体を予定していない建物」に限定している。解体も補助対象とし、建物所有者の負担を軽減する補助金制度の対象拡充を国に求めるとともに、市として独自の補助制度をつくり、「ゼロ・アスベスト」のまちづくりをすすめること。
(9)生活保護
- 自公政権が社会保障費抑制路線のもとで生活保護基準の連続引下げを強行した結果、生活保護世帯は苦しい生活を強いられている。1日3回の食事や毎日の入浴がかなわない等、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」が奪われている状況にあり、司法でも、この基準引下げの政府決定を違法とする判決が相次いで出されている。生活保護制度を憲法に規定された生存権にふさわしい水準にするために、これまで切り下げた生活扶助費・住宅扶助費等を抜本的に引き上げるよう国に求めること。
- 物価高騰による食料品や燃油代などの値上げが保護世帯に重くのしかかっている。特に温暖化によって夏の時期に災害並みの猛暑が続いても電気代を気にして冷房の使用を控えるなどの例もあり、命を脅かす事態となっている。市独自の夏季見舞金および年末見舞金を復活・拡充すること。また、本市は「負担の適正化を図る」と言って保護世帯への下水道料金減免制度を廃止したが、多くの政令市は引き続き減免制度を続けている。制度復活を含めた市独自施策を行うこと。
- 膨大な漏給、低すぎる捕捉率の早期解決が求められている。定期的な捕捉率の調査・公表、テレビCMやインターネットを活用した広報、公共施設などへのポスター掲示、市政だよりの1面への特集記事掲載などによる制度の周知徹底や相談の呼びかけ、誰もが手に取れるような場所に申請用紙を置くなど捕捉率向上策を講じること。また、特に若い世代に制度を周知するためにもSNSを積極的に活用すること。そのうえで、申請権を保障するため「面接」「指導・助言」を口実に不当に生活保護を排除する「水際作戦」を根絶すること。
- 保護申請時、申請者の親族に「金銭的援助ができないか」などと問い合わせる扶養照会をおこなうことが、保護の申請をためらわせる原因の一つになっている。2023年度、扶養照会を行って実際に金銭的援助につながった例は2578件中わずか11件しかなく、費用対効果も薄い。扶養照会はやめること。
- 全行政区の保護課面接室に1つ以上の監視カメラが設置されている。甚だしい人権侵害であり、トラブルのもととなっているだけでなく、申請・相談者に対して監視されているプレッシャーを与え、来所する人を減らす水際作戦の一種であり、ただちに撤去すること。
- 保護申請の際、本市では手持ち金が1円もないなど窮迫している状況の場合は一時貸し付けを受けることができるが、1日500円にとどめている実態がある。これではまともな食料を購入することもできず、運用の実態を見直して必要に応じた金額の貸し付けを行うこと。
- 利用者に年1回の「資産申告」を強要することは問題である。本市でもこれを根拠に預金通帳の提出強要や財布の中身まで確認するなど著しい人権侵害さえ起きている。実施要領は、利用者と福祉事務所とが協力して金銭管理の適正化を図るとしているだけで「資産申告」強要の根拠とはなりえない。本市として、「資産申告」は一切やめること。また、国に対し、誤解を招くような実施要領は撤回するよう求めること。
- 保護申請する市民に対して殊更自立を強調したり、保護を利用していても、居住用不動産や少額の保険、自動車、バイク等の保有が認められる余地があること等をあえて教えないなど、市民の生活保護を受ける権利を侵害するような対応は問題である。このような窓口での機械的な対応を改めること。また、「生活保護のしおり」や市ホームページの記載について、誤った情報や誤解を招く内容がないよう精査して改善し、正確に周知すること。
- 健康状態や年齢を無視した就労の強要はやめること。現場では、本人の意向を無視した問答無用の就労指導をおこなうといった事例が起きており、このような指導は真の自立を遠ざけるものであるためやめること。
- 適正受診指導などと称して入院日数や通院回数に対する不当な削減指導やジェネリック医薬品使用の強制を行わないこと。
- 入院時、医療機関からの寝巻貸与代金については保護費に含まれず自己負担となっており、市独自に支給すること。おむつ代については医者の認定がある場合に限定せず、必要額を市独自に補助すること。
- ケースワーカーの平均担当世帯数を減らすことは利用者の生活に寄り添った援助を行うために重要だが、2024年度も102.0ケースで、国の標準世帯数を20以上も上回っている。そのためにトラブルや誤った情報を伝えるなどといった事例が多数見受けられる。日本弁護士連合会や多くの専門家も職員の増員の必要性を指摘している。正規職員のケースワーカーを抜本的に増員すること。
- 本市のケースワーカーは大学を卒業して3年以内の職員が70%、経験年数4年以上はわずか12.4%と、依然として市職員としても、ケースワーカーとしても、経験が浅い職員が大半を占めており、それによって不適切な対応が増えている。日本弁護士連合会や学識者等から専門性の確保の必要性が指摘されており、社会福祉士や精神保健福祉士、弁護士など国家資格を有する職員の採用や配置を行い、生活困窮者へのきめ細かな支援などノウハウが継承できる体制をつくること。
- 本市では、就労支援等事業などのケースワーク業務について民間企業等への委託をすすめているが、このやり方は公的責任の放棄や、保護利用者への管理強化などの問題点がある。政府が検討しているケースワーカーそのものの民間委託も含め、これ以上の外部委託はやめること。
- 大学生・専門学校生などの生活保護受給権を認めないやり方や、大学、専門学校等への進学者を強制的に世帯分離して保護を打ち切るやり方は、進学をあきらめる子どもを生むと同時に新たな貧困を生み出している。「進学・就職準備給付金」などの一時金ではこの問題の解決にならず、仕組みを改めるよう国に要求すること。教育扶助費や高等学校就学費用は実態に照らせばまだ不足しており、増額を国に求めること。保護を受けながらアルバイトをして進学準備のための貯金をすることや保護費をやりくりして学資保険を積み立てることは認められているにも関わらず、現場では収入認定の対象とすることがあり、問題である。このような対応を行わないよう徹底すること。
- 進学の受験のための交通費支給など子どもの進学・就学時に活用できる制度についてほとんど周知されていない。活用できる制度などについて対象者への周知を徹底すること。また、児童手当と児童扶養手当の違いや収入認定について周知されておらず、現場で混乱が生じている。制度の改定があった場合は利用者に丁寧に説明すること。
(10)貧困
- 市民の貧困実態・貧困率の調査を行い、本市独自の目標・指標を定めて総合的な貧困削減計画をつくること。また、子どもの貧困対策についても、他都市にならって子どもの貧困率を公表し、削減目標を立て、その達成に必要な具体的な施策に取り掛かること。生活保護申請や生活困窮者相談を役所で待つのではなく、出前相談会など必要な人に支援が届くようにアウトリーチを強化すること。
- 長引く物価高騰によって、市民の暮らしはますます苦しくなっている。所得が低くなりがちな高齢者や障害者、ひとり親家庭に対して、貧困対策として他の政令市にならい上下水道料金の減免をただちに実施すること。
- 生活福祉資金貸付は、生活自立支援センターによる伴走型支援を条件にしているなど、貸付に厳しい条件が課せられており、必要な人が受けられない仕組みになっている。制度を抜本的に見直して、必要な人が受けられるよう国と県に要望すること。また、各区の社会福祉協議会にも窓口を設置すること。
- 水道料金・市営住宅家賃・住民税・国保料などの滞納は生活困窮のシグナルと捉え、ライフライン事業者の協力や局を越えた連携を行うこととなっているが、事業者には協力依頼を出しただけで、福岡市生活自立支援センターへの紹介人数さえも把握していない。市の内部で局を越えた会議を定期的に開催し、積極的に実態を把握するなど、実効性のある仕組みを構築すること。
- 昨年行われた市の「子ども・子育て支援に関するニーズ調査」によれば、朝食を毎日食べることができていない小学生の割合は年収300万円未満世帯とひとり親世帯ではどちらも1割を超えており、200万円未満の世帯では約2割にのぼるなど、突出している。また、民間のアンケート調査でも「学校の長期休みは給食がないので、毎年恐怖」などの声が寄せられている。行政の責任で子どもの欠食対策を行うこと。行政が本腰を入れた子どもの貧困対策に取り組まないなか、行政に代わって「子ども食堂」が大きな役割を果たしており、貧困対策のみならず子どもの居場所づくりや地域交流の場にもなっている。「子どもの食と居場所づくり支援事業」補助金を抜本的に増額し、書類手続きなどの簡素化を図ること。
- 市内のホームレスは依然として多く、切れ目なく対応できるように年末年始も対応できる窓口を開設するとともに、市内の巡回を強化して、相談に応じ、支援すること。ホームレスが施設への入所を求めた場合、感染症の検査などの理由からその日に入所できない仕組みを改めるために一時宿泊所を確保すること。民間ボランティアやNPO支援団体への委託費を大幅に増額すること。ホームレス患者は、受診する時にはすでにひどい疾患を患っていることが多いため、医療機関の負担は大変重くなっている。現行の入院協力金3000円では不足しており、大幅に増額すること。ホームレスなどの利用を物理的に妨げるいわゆる排除ベンチや排除アートの設置はやめること。
(11)民生委員
民生委員の充足率は92.5%と低い水準にとどまっており、なり手不足は引き続き深刻である。欠員の出ている地域には近隣からのフォローも行われているが、76の地域では完全に空白となっている。本市は「民生委員の活動に資するため」の施策として「地域共生推進員」の配置、地域包括支援センターの増設やスクールソーシャルワーカーの増員等を行っているとしているが、抜本的な負担軽減にはつながっておらず、個人情報の保護をめぐる困難さも相まって、なり手不足の根本解決には程遠い状況である。本来行政が行うべきことを押し付けていないか等、徹底した検証を行い業務量について抜本的に削減するとともに活動費の大幅増額を行うこと。また、欠員が生じている地区を他地区の委員がカバーするやり方には無理があり、行政の責任において臨時の代替措置をとること。
(12)障害者施策
- 「福岡市障がい者差別解消条例」の改定が行われたが、当事者団体等が求めてきた「何人も」という文言を実体規定に入れる課題について取り入れられなかったため、見直しを求める議会請願も行われた。相当数の当事者の意見が切り捨てられたままの状態は問題であり、更なる改定に向けて検討をすすめること。また、議論の過程で明らかになった差別体験等の実態に基づいて本市の施策のあり方を具体的に検証し抜本的改善につなげること。
- 福祉乗車券・福祉乗車証については、「持続可能な制度とするため」等として障害の程度や所得によって交付対象を狭める差別的取り扱いは許されない。特に現下の物価高騰や公共交通機関の料金引き上げは大半が低所得層である障害者世帯に大きな打撃となっており、対象及び交付額の拡大は喫緊の課題である。制度の対象を関係者から要望の強い療育手帳Bおよび精神障害者手帳2級まで拡充するとともに、所得制限を廃止し、交付額を引き上げること。
- 精神障害者に対する交通運賃割引を頑なに拒否しているJR九州及び福岡北九州高速道路公社に対し障がい者差別解消条例が定める「合理的配慮」の趣旨を踏まえ早急に実施するよう強く申し入れること。実施されるまでの間、市として自己負担分を補填する手立てをとること。また、障害者が一人で手帳にもとづく割引を受けるには「100㎞以上」という異常な条件を付けているJRに対し、見直しを求めること。
- 障害者が65歳になるとそれまで受けてきた障害者サービスから介護保険サービスに半ば強制的に移行させられ、自己負担が増え、サービスが継承・継続されず利用者は肉体的にも精神的にも大きな負担を感じている。新高額障害福祉サービス等給付費が支給されるとはいえ、対象要件から外れる人も多い。介護保険の対象年齢でも障害者福祉制度と介護保険制度を選択できるなど、新たな自己負担なしでサービス水準が維持できるよう市独自の手立てをとること。問題の大元にある障害者総合支援法の第7条(介護保険優先)の廃止を国に求めること。
- 本市主催の行事において、未だに手話通訳者をつけないものが散見される。担当者の責任に矮小化することは許されず、早急に是正すること。
- 「手話言語条例」は38都道府県を含む542自治体へと広がり、政令指定都市においても6自治体へとひろがってきている。しかし、本市においては障がい者差別解消条例に手話も言語に含むことが書き込まれていることを理由に頑なに手話言語条例制定に背を向け続けており、当事者・関係者から批判の声や強い要望が上がっている。これ以上先送りすることに道理はなく、本市においても早急に制定作業に入ること。
- 手話通訳者派遣事業の範囲については、「社会生活上外出が必要不可欠なとき」等とする利用条件を撤廃すること。また、聴覚障害者用の情報提供施設について市民プラザ内の「情報センター」では不十分であり、春日市のクローバープラザ並みにビデオ制作やビデオライブラリー、各種イベント実施等の機能を持たせること。
- 本市における登録手話通訳者数は71人と減少し、担い手が不足している。その報酬は4時間未満4160円、4時間以上5370円となっているが、福岡県では2時間以内4000円、以後1時間ごとに2000円とされており、その格差は重大である。人材確保の大きな要因となっている低すぎる報酬を県並みに引き上げ、市が直接正規職員として雇用するなど、専門職にふさわしい待遇へと改善すること。
- 強度行動障害者の短期入所施設はニーズに比して絶対的に不足しており、市の責任で増設するとともに、報酬見直しを国に求めるだけでなく、民間事業者の参入がひろがるよう市独自に職員加算や施設の改造費補助を創設すること。「強度行動障がい者支援事業」はノウハウの蓄積、人材の育成、事業者への支援などを充実させること。
- 障害者グループホームの設置数は増えてきたものの、ニーズからすれば大幅に不足している。市の運営費補助を重度障害者受け入れ施設だけに限定せず拡充するとともに、土地や建物の確保や新設時の改修費への補助を増額すること。また、利用者への家賃補助については、国任せにせず、市が独自に上乗せ補助を行うこと。低すぎる報酬単価によってひとり夜勤体制となっている等の状況を解消するためにも報酬額を抜本的に引き上げるよう国に求めること。
- 知的障害者の地域生活移行については、必要とする支援の質・量の確保、十分な所得保障や住宅手当の充実等、知的障害者の希望と選択を最大限尊重する仕組みを構築しないまますすめることは許されない。支援策の抜本拡充を図り、入所施設も「終の住処」として利用できるようサービス提供や支援の実態について現場で適宜確認するとともに、設備や職員体制の充実を図り「親なきあと」の不安を取り除くこと。
- 国において行われた報酬改定は、生活介護事業の基本報酬への「時間刻み」導入やグループホームの基本報酬基準の大幅引き下げが含まれ、現場の困難をひろげている。障害者支援施設等労働者の賃金は全産業労働者平均まで未だ月6万円近くの隔たりがあり、現場の声を踏まえ、報酬の全体的かつ抜本的な引き上げを図るよう国に求めること。また、最低賃金の引き上げにともない施設規模によっては新たに数百万円の財源が必要となるケースも生じているが、何の手立ても取られておらず経営を圧迫している。財源を手当てするよう国に求めること。また、市独自に処遇改善のための補助や家賃補助を創設すること。
- 障害者の一般就労は、収入を得るということだけではなく、就労によって本人が社会とのつながりを持ち、生活や人生を豊かにする等、重要な意味を持っている。障害者に対する継続した就労支援には就労支援事業所職員が安心して働ける雇用の安定性が不可欠であり、NPOや社会福祉法人などA型事業所を営む法人が安心して就労支援事業を継続していくためにはこの間のベースアップ等支援加算では不十分であり、国に報酬単価の引上げを求めるとともに、市として独自に財政支援を行うこと。また、B型事業所においても月1500円という異常に低い工賃の実態もあり、その増額が図れるよう市としても財政支援を行うこと。
- 本市の障害者雇用は、法定雇用率を超えてはいるものの、その内訳はほとんどが非正規雇用となっている。正規の採用枠を抜本的に増やすこと。民間企業に障害者の採用増を要請し促進するため、国任せにせず、本市独自の補助制度をつくること。
- 障害者関連施設の指定管理者を社会福祉事業団から民間団体に移行する公募の動きや指定管理料の縮減、新たな事業をトップダウンで押し付ける等は、職員の処遇やモチベーションの低下につながり、サービスの低下を引き起こすものでありやめること。
- 障害者基幹相談支援センターの委託料はそもそも低い中、物価等の高騰により人材確保や運営に更なる困難をきたしており、増額を図ること。
(13)ヤングケアラー
子どもたちが、家族・近親者の世話や介護に追われ、重い負担に苦しんだり、成長や進路の障害となったりするヤングケアラーは深刻な社会問題になっている。本市でも専用相談窓口と専用相談ダイヤルが設置され、2023年度は前年度の倍となる延べ897件の相談が寄せられているが、うち当事者は10%ほどであり非常に少ない。当事者に情報が届くようにSNS等を活用した情報発信をつよめ、容易に相談できるSNS相談窓口を開設すること。また、市として支援団体の方々の意見を踏まえ、教育現場や福祉現場におけるヤングケアラー問題の研修の充実、市民への啓発をすすめながら、総合的なヤングケアラーの実態調査に取り組み、地域ソーシャルワーカーの配置をはじめとした支援策を構築すること。さらに、社会福祉や教育、児童心理分野等の専門家を配置し、総合的な取り組みをすすめることができる専門の部署を早急につくり、各区役所にも担当者を設置すること。
3、ムダな大型開発をあらため、市民の生活・安全優先のまちづくりを
(1)天神ビックバン・博多コネクティッド
規制緩和による街壊しである「天神ビッグバン」には昨年度までに約126億円の巨額の税金が使われ、今年度も約5億円が投じられる見込みである。その結果、全国最悪の地価の上昇が起こり、もうかっているのは都心に大きな土地やビルを持っている大企業や富裕層ばかりである。その一方で、福岡市のアパートの家賃は2015年と比べ2割も高くなり、ファミリー向けマンションは史上最高額の家賃に達するなど、都心部には住民、とりわけ中低所得層が住めなくなりつつある。また、長年、当地で営業をしてきた業者も追い出す計画である。このような街壊しを許しておくわけにはいかない。
天神ビッグバンは現時点できっぱり中止すること。博多コネクティッドも天神ビッグバン同様、中止すること。
(2)九州大学箱崎キャンパス跡地
- 4月、住友商事を筆頭とした企業グループが九州大学箱崎キャンパス跡地開発の優先交渉権者に選定された。優先交渉権者が提案している「AI見守りカメラ」や「健康情報を一元管理するPHR基盤」は、企業が個人情報を握りそれをもとに商売をするものであり、情報流出を防ぐ保障もなく、住民から要求されたものでもない。優先交渉権者が提案するデジタル技術の導入については、市として個人情報を守る立場に立ち、住民への情報開示と合意形成を図ること。
- 跡地開発では人口が5400人になると予測され、分譲住宅だけで2000戸の供給が予定されており、600人の児童の増加を見込んでいるにもかかわらず、市と九州大学は毎年の供給戸数の制限を理由に学校用地の確保は必要ないとの立場である。これでは新たな過大規模校を生む可能性があり、九州大学に学校用地を確保させること。
- 優先交渉権者の提案では「緑化率40%、樹木1万本以上による圧倒的な緑量確保」とされているが、1万本では「圧倒的な緑量」とは言えない。そもそも九大があったころは、100年の歴史を経て立派な樹木がたくさんあり、存続を望む住民の意見も聞かず伐採した経過がある。住民が求めているのは、表面的な緑化でなく、優先交渉権者に樹木量を抜本的に増やすよう求めること。
- 優先交渉権者の提案では近隣公園と箱崎中学校を近接して配置し一体的なオープンスペースを創出し、防災性の向上を図るとしている。しかしそこでは一時的な避難場所や応急的な活動しか想定されていない。東区には宇美断層もあり、ここが揺れたら大きな打撃を受ける地域である。能登半島地震の経験からも食料や水、寝る場所、トイレなどを兼ね備えた広大な防災公園をつくること。
- 優先交渉権者を決める審査過程は何も公開されず、市が不公正な関わりをしたとの報道が複数のメディアからなされ、怪文書までばらまかれる事態となるなど、問題が山積みである。優先交渉権者を決めた不透明な審査過程と高島市長の関与について情報開示を行うとともに、住民要求を基本に据えた跡地利用にするために、多くの市民が計画に参加できる仕組みを整え、「グランドデザイン」に沿った跡地利用に抜本的に見直すこと。
- 跡地開発において、グランドデザインに基づく地域住民の要望実現を求めている住民団体が、九大と優先交渉権者に説明会を求めていることに対し、九州大学移転・跡地対策協議会において、九大の担当者は「偏った情報」などと、住民団体にレッテル貼りを行い、真摯に向き合わない不誠実な答弁を行った。傍聴に来ていた住民からは、「この団体のワークショップで情報を知ることができたのに、九大の態度に違和感」など不審を抱くものとなっている。九大に対し、住民団体に対する発言の撤回を求め、説明会に応じるよう働きかけること。
(3)人工島・港湾再編
- 人工島の土地処分は公共施設の移転、立地交付金のばら撒きなどあの手この手で巨額の税金を投入した結果である。長年にわたり毎年100億円もの税金がつぎ込まれてきた上に、今後も約239億円の事業費を見込んでいる。このような一定の地域を特別扱いする税金の使い方はやめること。
- 港湾計画で定める博多港の国際海上コンテナ取扱量目標値130万TEUは、現在のペースで目標達成は「厳しい」と当局も認めざるを得ない状況である。さらに、人工島への5万t級以上のコンテナ船の入港は、直近の5年間でわずか5隻である。15m水深の人工島D岸壁の整備や大型コンテナ船対応のための東航路整備事業は必要性がなく税金のムダづかいでありやめること。
- 人工島の民間住宅や道路・下水道などに助成する「住宅市街地総合整備事業」による積水ハウスなど特定の大企業への露骨な税金投入はやめること。
- 「中長期的な視点で検討」などとして未だに現存している必要のない人工島への鉄軌道の導入計画はきっぱりとやめること。
- コロナ禍でインバウンドが破綻して、ウォーターフロント地区再整備も大幅な見直しが迫られた。海外クルーズ船の寄港が再開したことを理由に賑わいの拠点などといって財政負担が伴う開発を行わないこと。中央ふ頭や須崎ふ頭の新たな埋立て、埋立費用だけで700億円と莫大な費用がかかる箱崎ふ頭地区の水面貯木場及び海面処分場の埋立てはやめること。
- 第3セクター・博多港開発株式会社はケヤキ・庭石事件を起こすとともに、人工島事業の土地処分ができず、経営危機に陥り、市から多額の増資を受け、会社2工区を市に399億円で譲渡するなど、巨額の税金が投入されたおかげで存続している会社である。そもそも市の外郭団体の見直しでは、廃止も含めて検討されてきたものであり、このような会社に今後の埋立事業などを担わせることは許されず、会社はただちに解散し清算すること。
(4)大阪・関西万博
ゴミの最終処分場を会場としているためガス爆発事故が発生し、協会が事実を隠していたことも発覚した。また、アクセスが夢咲トンネルと夢舞大橋の二つしかない夢洲で大規模災害が起きた際の避難計画も未だにないなど、安全性への懸念が生じている。万博はカジノ建設のインフラ整備に公金を投入するためのものであり、本市が関わればカジノを容認するメッセージを送ることになる。このようなイベントに市民の税金を使うことは許されず、きっぱりと万博から手を引くこと。
(5)MICE・観光
インバウンドや富裕層・大企業優遇をやめ、「住んでよし、訪れてよし」の観光立国推進基本法の理念に立ち返った観光政策へと転換すること。地域住民のみなさんが望む形で観光客の受け入れができるよう、住民と自治体と観光関連業界とで検討されるサスティナブルツーリズムをさらに推進すること。
(6)国家戦略特区
国家戦略特区は、農業、医療、教育、労働などの分野の国民生活や安全にかかわる規制について、財界の要求に応じて緩和し、市民を守るルールを壊す仕組みとなっている。この制度は地域経済の発展にもつながらず、真の意味での経済成長をもたらさない。本市の「グローバル創業・雇用創出特区」指定を返上すること。
(7)住宅困窮者対策
- 生活費に占める家賃の割合が極めて高いうえに、昨今の物価高騰などを口実に、家賃を増額する通告がされる等、更なる家賃負担増が広がりつつある。加えて、引き続く物価高騰が何重にも暮らしの危機的状況を招いている。収入が年金のみの世帯、学生を含む低所得の単身者世帯、高齢者単身女性世帯、シングル子育て世帯等に対しての家賃補助制度を創設すること。
- 高齢のために入居を拒否される事例が各地で起こっている。セーフティーネット住宅の実績は極めて不十分ありもっと充実を図ること。
(8)市営住宅
- 「住宅に困窮する低額所得者に低廉な家賃で賃貸」する市営住宅はニーズが高いのに、応募倍率は、一般枠で11.1倍、単身の高齢者・身体障害者は31.7倍など、前年度から上昇している。「管理戸数は現状維持」という計画を見直し、新規に建設を行うとともに、髙島市長就任当初より400戸以上も減っている管理戸数を建替え時に増やすこと。またUR賃貸住宅の空き家や、民間賃貸住宅を借り上げて市営住宅にするなど多様な供給方式の活用により、市営住宅の供給を大幅に増やすこと。
- 未婚率の上昇、雇用の不安定化、所得の低迷は若者に過度の住宅費負担を強いている。若者も市営住宅に一般入居できるようにすれば多様な年齢層で団地コミュニティを構成することにもつながる。現行の基準を見直すとともに民間賃貸住宅の借り上げを含めて若者向け市営住宅を増やすこと。
- 住民による市営住宅の共益費徴収や、草取り、駐車場の管理、電灯交換などの設備管理、住民トラブルの解決等を管理組合に押し付けるのではなく、市および住宅供給公社が責任を持って行うこと。また、電灯は改修工事や故障時の交換を待たずに交換頻度が少ないLEDの利用を早急にすすめること。
- 市営住宅の建替えに伴う余剰地については、第一義的には市営住宅の増設を図ること。それ以外の場合でも、住生活基本計画に基づき民間売却ではなく住民要望を反映し、「高齢者福祉施設等の誘致」など公的に活用すること。また、弥永住宅の余剰地には住民要望にそって、高齢者福祉施設や児童館、図書館等を設置すること。
- 公的関与を弱める指定管理者による市営住宅の管理はやめ、市住宅供給公社で行うこと。
- 市営住宅の入居者の訪問介護や訪問看護およびデイサービスの送迎等の際に利用できる無料の来訪者用駐車場を増やすこと。また、敷地内有料駐車場に近隣の工事車両などが長時間駐車して、市営住宅の住民への来訪者が利用できない事態も生じている。住民関係者が優先して使えるように必要な手立てを取ること。
- 福祉のまちづくり条例には市営住宅などについて「市は…高齢者、障がい者等が安全かつ円滑に利用できるようにするために…必要な措置を講じるよう努めなければならない」と定めており、エレベーターのない市営住宅はバリアフリーの観点から重大な問題である。建替えなどで対応する現在の市の整備計画ではあまりにも遅く、すべての市営住宅にエレベーターをすみやかに設置すること。
(9)建築紛争
- 中高層マンション建築の苦情相談件数は昨年度94件にも及び、住環境を守りたいという住民の願いは高い。「建築紛争の予防と調整に関する条例」は建築に対する「住民合意」を求めておらず、紛争の原因となっている。住民合意・罰則規定の導入など条例をより実効性のある内容に抜本的に改定すること。あわせて、当事者となる「住民」の範囲拡大、住民から要求があった場合の説明会開催の義務化、原則として説明会出席者全員が署名した議事録の提出、市の指導の義務化などを盛り込んだ、条例改正を緊急に行うこと。また、解体についても近隣住民への事前説明と周知の義務付けなどの規制を盛り込むこと。
- 住民説明会が開かれても不誠実な説明・対応に終始して打ち切るケースや建築主等が一方的にまとめた、事実上虚偽の報告ともいえる「議事要旨」をつけて市に報告していた事例や住民を妨害者扱いして訴訟を起こすなど悪質な行為が後を絶たない。また、「条例を遵守する」と言いながら住民の要求に歩み寄らない事例もある。建築主への条例の周知のあり方を見直し、条例及び解説書の精神が実際に生きるように徹底すること。
- 開発規制を強化するために用途地域の見直しを行うとともに、用途地域変更の住民提案、建築協定、地区計画の積極的な周知と適用に努めること。
(10)公共交通・生活交通
- 福岡市の交通政策の基本的指針となる「都市交通基本計画」の改定に向けた検討がすすめられている。計画の検討資料のなかには、6年前の市長選で市民から強い批判を浴びた博多駅からウォーターフロントを経て人工島に抜けるロープウェイのようなものや2年前の市長選後に大問題になった福岡空港国際線への地下鉄延伸なども試算されており、どれも採算の取れないとんでもない提案ばかりが並べられている。これらの提案は市民のためではなく観光客などの利便性向上と民間大企業の利益を優先させるものであり、撤回すること。
- 唐人町からみずほPayPayドームへの「動く歩道」など民間会社からの提案が「基本計画」案の資料に掲載されているが、結局、事業者側は国や市からの補助金などを当て込んでおり、これらの案を実施すれば、莫大な公金投入に繋がる。前のめりの姿勢はあらため計画から除外すること。
- 「都市交通基本計画」案では今後の生活交通の支援策について、バス路線などの代替交通の確保と地域主体の取り組みへの支援強化などとし、具体的な新しいものは見受けられない。デマンド交通など不十分だった従来の施策の延長線上では取り残される住民を生み出してしまうのは明白である。地域の諸条件に応じた施策の策定と実施の責務を果たすこと。
- 巨額の費用がかかる空港国際線ターミナルへの都市高速道路の延伸は中止すること。
- 高低差が激しく、バス停からの距離もあり、買い物や通院など特に高齢者の移動が困難になっている地域が少なくない。区役所をはじめ地域交流センターなど主要な公共施設に公共交通機関でアクセスすることが困難な住民も多い。このような地域に安価で利用できるコミュニティバスやシャトルバスを運行させること。市は運行の条件に地域の協力を求めるが、それ自体に大きなハードルがあり、これを超えなければ生活交通が保障されないのは不公平である。住民自治会の動向によって支援に差をつけることはやめること。
- 西鉄によるバスの減便・廃止は、通院や買い物など住民の日常生活に大きな支障をきたしており、生活交通確保への最大限の配慮を定めた公共交通条例を無視している。交通事業者としての責務を果たさせるように早急に増便を求めること。生活交通の確保を交通事業者の努力義務ではなく義務として明記することや、「自助」「共助」などとし住民に責任を押し付けるやり方を改めるなど、生活交通条例を改正すること。
- 市営地下鉄とJR筑肥線の乗継割引については請願が全会一致で採択されており、現在の20円から東部の西鉄との乗継同様すみやかに60円へ拡大するようJRに強く要請すること。また、JRが割引を実施しない場合でも、物価高騰対策および公共交通利用促進による脱炭素施策としても、本市が先行して割引額を10円から30円に引き上げること。加えて連続割引区間について、2区から3区に拡大すること。
- JR筑肥線運休の際に、乗客は姪浜駅に足止めされ徒歩やタクシーなどで目的地に向かわざるを得ないケースが度々ある。その場合、JRに代替輸送を速やかに行うよう強く申し入れること。JRが実施しないならば市の責任で市民の交通手段を確保すること。
- 毎年のように視覚障害者が駅ホームから転落する事故が後を絶たない。市内の西鉄天神大牟田線各駅およびJR博多駅などにホームドアを早急に設置するよう西鉄やJR九州に強く申し入れるとともに、国まかせではなく、市としても推進のための協議会を設置すること。また、ホームドアが設置されるまでの間、乗客の安全対策要員をホームに配置するとともにホーム中央に視覚障害者の道しるべとなる線状誘導ブロックや内包線付き点状ブロックを敷設するよう事業者に申し入れること。
- JR九州による駅無人化のため車椅子利用者は介助員が来るまでに長い時間がかかったり、前日までの予約ができなければ移動に著しい制約を受けたりしている。同社に対して移動の自由を制限されて苦痛を受けたなどとして損害賠償を求めた訴訟が係争中である。駅の無人化は本市の障がい者差別解消条例が規定する合理的配慮に欠けるものであり、全駅を有人に戻すよう、JR九州に求めること。
- 一方通行なので、人にぶつからず階段より安全であるエスカレーターは、多くの視覚障害者が単独で利用している。エスカレーターへの誘導をするための点字ブロックを設置すること。
(11)道路・交通安全
- 「道路整備アクションプラン2024」における「生活関連経路バリアフリー化された割合」は、年間整備延長が少なく、目標を達成できるペースでもないため、抜本的に予算を増額すること。また、バリアフリー化の対象を重点整備地区に限らず、緊急性や必要性を踏まえて、全ての鉄道駅周辺とその周辺道路等のバリアフリー化を推進すること。
- 従来から、交差点の歩道と車道との間には2センチの段差が必ずある。車椅子が2センチの段差を乗り越えるためには一定の力が必要であり、衝撃で荷物が飛び出ることもある。障害のある当事者との協議で、歩道に段差のない縁石の設置を始めているが、規模もスピードもあまりにも不十分である。予算も大きく確保して、急いで歩道と車道の段差解消をしていく計画を必要性のあるところに立て、実施すること。
- 通学路および学童保育、園児等の移動経路や保育園周辺を総点検し、安全対策を講じること。さらに、「小学校周辺の歩車分離率」を引き上げること。
- 消えかかった横断歩道や停止線、国道の中央分離帯などの路面標示を改善するとともに交通安全施策関連予算の増額を県や国に求めること。また、カラー舗装や路面標示は安全対策として重要であり、関連予算を増額すること。
- 昨年210件発生している道路陥没を未然に防ぐために、日常パトロールや路面下空洞調査等の頻度を増やし、原因と劣化・優先度の分析をおこない、道路改修・維持対策を講じること。
- 自転車の安全を確保するためには、歩道、車道と分離された自転車通行空間を整備することが重要である。しかし、実態は進んでおらず、整備されたものも歩行者や車との混在形態のものが多い。歩道、車道と分離された自転車通行空間を整備するために、関連予算を抜本的に増額し整備を急ぐとともに自転車対歩行者事故を減らす対策を強化すること。
- 自転車に乗る人のヘルメット着用を普及するために、他都市にならいヘルメット購入費補助制度を創設すること。
(12)水道・下水道
- 異常な物価高騰が収まらず、一方で賃金や年金が物価高に追いつかず、多くの市民の暮らしや中小事業者の業況等がきわめて厳しい状況に置かれているもと、水道料金は市民に重い負担となってのしかかっている。本市は、水道料金の減免を求める市民の声に対し、企業債残高の増大を招くなどと言い訳をし、支払期限の延長のみ対応しているが、2023年度は企業債残高を計画以上に約17億円も縮減しており、問題は市民生活を守る立場に立つかどうかである。本市独自に、緊急の水道料金の減免措置を講じること。
- 本市の上下水道の減免制度は、水道料金にはそもそも全くなく、下水道料金では災害時だけであり、他都市に倣って非課税世帯や障害者世帯を対象とした減免制度をつくること。また、生活保護利用世帯への下水道使用料の減免制度については、政令市では、仙台・さいたま・相模原・静岡・浜松・名古屋・広島市で実施され続けており、本市でも復活させること。
- 水道事業は、安全・安心・安定的な水供給によって、憲法の生存権を保障するものであり、地方公共団体主体で健全な運営がなされるよう現行のまま直営を堅持し、民営化や広域化は行わないこと。
- 能登半島地震では、道路や電気・通信と並ぶ重要インフラである上水道が根こそぎ破壊され、取水、浄水、管路などの機能が停止し、一部には長期間にわたり給水が再開されない事態となった。この地震の教訓からも、水道施設・管路等の耐震化を集中的に推進することが求められる。本市の水道配水管の耐震化率は2023年度末で61.8%と年間0.6%しか進んでおらず、残されている配水管の耐震改修について、現行の年間45kmの更新ペースでは完了まであと35年間もかかるため、さらに早めるよう計画を見直すこと。また、災害時などに水を供給しなければならない重要給水施設の耐震ネットワーク工事は、未だ救急告示病院である今津日赤病院など7か所が未整備であり、工事を急ぐこと。さらに、この耐震ネットワークの対象となっていない避難所も多くあり、対象施設を抜本的に増やすこと。
- 下水道管の未耐震は、震災時のトイレの使用などに大きな支障をきたすことが能登地震でも改めて明らかとなった。本市の下水処理場6施設中4施設が地震時における排水機能が確保されておらず、下水道管渠全体でも未耐震化率が65.9%であり、早急に改善すること。
- 福岡地区水道企業団の海水淡水化施設は、年間約25億円の維持管理費等の経費をかけながら、実際は、2013年以降、1日平均生産水量が5万㎥ある施設能力の半分を超えた年はほとんどない。そもそも本市の1日最大給水量45万9633㎥に対し施設能力は78万987㎥あり、すでに過剰である。さらに日量1万㎥の五ケ山ダムからの用水供給が開始されており、海淡施設を稼働する必要はない。したがって、2027年までさらに155億円をかける設備更新はせず、海淡施設は廃止するよう企業団に強く求めること。
- 猛毒のダイオキシンを生成する2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸(除草剤)が、1971年に林野庁によって五ケ山ダムの上流域の佐賀県吉野ヶ里町に945kgが埋められ、長年放置されてきた。国は、これを撤去する方針を持ったが、その後の進捗がない。国に対し、安全かつ速やかな撤去を強く要望すること。
- 能登半島地震でも明らかになったように、給水車と運転要員の確保は、今後の大規模災害等を考慮すれば重要な課題である。横浜市19台、大阪市16台、熊本市7台などと比較しても、現在の本市保有台数4台は充分ではない。必要な財政措置を国に求めるとともに、市独自でも給水車と要員を拡充すること。
(13)防災
- 能登半島での大地震は、県による地震被害想定の見直しが行われず、インフラ等の耐震化の遅れとともに、消防や自治体職員が大幅に削減されて防災力が貧弱な中、国や他の自治体からの派遣に依存せざるを得なかったことが指摘されている。本市「地域防災計画」の基本理念には「市民、企業、NPOとの共創」などとして「自助、共助」をことさら強調しており、能登半島地震で明確となった自治体の責務の位置づけが曖昧である。「地域防災計画」において自助・共助を求めるだけでなく、市の責任で地域防災力の向上に取り組むよう「計画」を改めること。
- 本市には、警固活断層とともに、政府の特別機関である地震調査研究推進本部が主要活断層と位置付けた日向峠-小笠木峠断層、宇美断層があることから、本市防災計画の想定地震に3つの活断層を入れること。
- 本市の地震による想定避難者数2万5千人は、想定されている全壊住宅数と焼失建物に住む人の数である。しかし、避難するのは全壊や焼失した家屋の人だけではなく、半壊や一部損壊の世帯や、不安から自主避難する人々も見積もるべきであり、想定避難者数を抜本的に見直すこと。
- 本市は水と食料について、国からのプッシュ型支援物資が届く最大3日間分として、想定避難者を人口の1.5%の3万人の3食分合計27万食を公的備蓄している。しかし、能登半島地震では1週間後でも支援は届かなかった。国の支援を当て込んだ貧弱な備蓄計画は抜本的に見直すこと。
- 本市の公的備蓄の内、飲料水の86%、食料の75%が、博多区月隈の収蔵庫に集中配備となっている。これでは、警固活断層で大地震が発生し、市内道路が断層を中心に寸断されれば、本市の東部と西部との輸送ルートが確保できなくなり、必要な物資が避難所に届かない事態となりかねない。新潟市では8行政区にある54の拠点施設に一定の備蓄を行い、それとは別に、小・中学校、高校など360カ所に分散備蓄している。このような体制は、名古屋市でも、横浜市でも同様に取られている。月隈に集中している備蓄のやり方は、他都市に倣って、早急に分散配備に切り替えること。
- 能登半島地震では、下水道や水道が寸断されてトイレが使えない状況が発生し、トイレを必要数いち早く確保する重要性が浮き彫りとなった。本市には携帯トイレの備蓄は33万回分しかなく、3万人の避難者が1日5回の用を足したとして2日分しかない。また、耐震化された下水道に繋がる下部構造を構築しておけばすぐにでも使えるマンホールトイレは、本市には25施設76基しかなく、大阪市の1450基と比べても余りにも足りない。さらに、トイレ問題は関係部局が多岐にわたることから、全体統括責任者を明確に決めることが求められている。携帯トイレの備蓄を抜本的に増やすとともに、マンホールトイレは地区避難所408カ所に、計画的に急いで整備すること。また、トイレ対策の全体統括責任者を明確にすること。
- 能登半島地震では、金沢大学による珠洲市での調査で、木造家屋100棟のうち約40棟が全壊状態で、その半数が1981年の「新耐震基準」導入後に新改築されたものだったとされている。福岡市内の住宅については約10万戸が耐震基準を満たしているか不明とされているが、それに加えて、新耐震基準を満たしているとされる住宅約67万戸についても大地震に対して必ずしも安全とは言えなくなった。東京都では2000年以前に建築された新耐震基準の木造住宅についても診断や改修について補助事業を開始している。市内建築物の耐震化を早急に促進するために、本市として無料の簡易診断を行うとともに、改修補助額を抜本的に引き上げること。また、対象外とされている1981年以後に建築された新耐震基準の住宅にも対象を拡充すること。さらに、人命確保のための耐震ドア、窓や屋根の補強だけでも助成を活用できるようにすること。あわせて、木造戸建て住宅の耐震改修工事費補助事業については、多額の工事費全額を事前準備しなければならず、市から補助金額を直接工事事業者に支払う「代理受領制度」の速やかな導入を行うこと。
- 国の被災者生活再建支援金は最大でも300万円と少なく、加えて現行の支援金額となった2007年に比べて建設資材は151%に値上がりしており、現状の支援金額では大幅な目減りとなっている。さらにこの対象は、「全壊」もしくは「大規模半壊」に限られる。また、福岡県被災者生活再建支援金は、全壊世帯には最大200万円が支給されるが、一部損壊は対象外となっている。国や県に対して住宅支援をさらに充実するよう求めること。あわせて、福岡市災害見舞金は全・半壊世帯に最大6万円を支給するだけの制度となっており、抜本的に充実させること。
- 大雨による避難指示が出ても避難する人が極めてわずかという問題がある。市はハザードマップを配布するなどとして自宅の土砂災害のリスクの認識や、マイ・タイムラインの作成推奨で正しい避難行動の理解促進を図るというが、2018年の西日本豪雨では愛媛県肱川の野村ダム等の緊急放流による洪水から避難できず犠牲を生み、昨年の久留米市の土砂災害では土砂災害警戒区域の指定外で被害が出るなどしており、行政の正確な情報伝達については、さらなる研究が求められている。したがって、市民の避難に関する正確な情報が速やかに伝わるよう日常的な体制強化を図ること。
- 本市の洪水ハザードマップは2級河川の氾濫想定だけが記載されており、未だに準用河川や普通河川の氾濫等による内水浸水が反映されていない。ハザードマップを実際の避難行動に結びつくようにするために、内水浸水想定区域を作成して反映させるとともに、過去の浸水実績やワークショップ等で住民から出されている意見も図示に用いるなど、改定を急ぐこと。
- 津波ハザードマップについて、避難の方向の記載はあるものの、区域内で避難できる高いビルなどが記載されていない。必要な津波避難ビルを確保し、ハザードマップに記載すること。また、避難ビルの認証シールやオートロック対策など実効性ある対策を早急にとること。
- 本市の災害予防計画では、パソコンやスマートフォン等を活用することが前提となっており、それができない高齢者や障害者などには災害時に自分のいる地域でどういう被害が起きるのか、正確に知ることができない。ハザードマップや揺れやすさマップについて、全区1本のものが配布されているが、具体的な危険箇所は、きわめてわかりにくい。避難経路や避難場所はどこかなどが誰にでも理解できるようにすることが求められている。市の責任で校区ごとのマップを作成し、全世帯に配布すること。
- 「福岡市地域強靭化計画」には、被災後の都市のイメージの回復、福岡市のブランド力の確保・向上策として、平時からMICE誘致、開催支援策を推進していくなど、災害対策とは関係のない事業も入っており、見直すこと。
- 年々集中豪雨の発生などによる危険が高まっているもとで、県が指定する市内の土石流災害にかかる特別警戒区域を含む警戒区域380件のうちハード事業が実施されているのは、わずか5件、1.3%、急傾斜地崩壊における特別警戒区域を含む警戒区域1397件 のうち、わずか6件、0.4%となっている。県に対して、ハード事業の大幅な前倒しを実施するよう求めるとともに、市としても安全確保の対策をおこなうこと。
- 本市の指定避難所は、コロナ禍を踏まえ、避難者1人当たりの面積を4㎡確保すれば、最大で10万1000人しか収容できない。また195か所ある一時避難所では、約1割に当たる19か所で浸水時には使用できず、約25%の47か所で1階を使用できない。さらに、260か所ある収容避難所でも、約1割に当たる25か所で浸水時には使用できず、約17%の45か所で1階を使用できない。また、エレベータもないなど、バリアフリー化が求められる避難所も多い。災害が迫っている時は、ためらわずに避難所へ行く行動を市民に求めるためにも、避難所が使えない、行っても入れないという現状を打開する防災計画が求められている。したがって、抜本的に避難所の増設をはかり、バリアフリー化を急ぐとともに、企業や団体などの民間施設、学校の教室、ホテルなどの宿泊施設など、あらゆる場所をフル活用する協定を結び、避難スペースを増やすこと。
- 避難所に段ボールベッドを導入することは、避難者の健康を保つ上で不可欠である。本市は、国の支援や企業の災害時応援協定を前提にして、運ばれてくることを当てにしているが、公的備蓄されているものはひとつもないのは問題である。段ボールベッドの公的備蓄を行うこと。また、避難所における人権やプライバシーを守るために必要な間仕切りは1校区あたり10セット、避難所用テントは20台しか備蓄がなく、市として必要数を確保すること。
- 防災対策や防災備蓄、避難所運営における「ジェンダーの視点」にたった取り組みは、きわめて重要な課題である。本市の防災会議委員49人のうち女性委員は8人16%であり、北九州市の47%と比べても異常である。女性の視点がないことが、防災備蓄にも表れており、政府が奨励しているおりものシートや、女性用下着、妊婦用下着、母乳パットなどとともに、介護用品7品目もない。市として防災への女性の参画をすすめ、具体的な意見を聞いて、最低限の備蓄を整えること。
- 避難所における性的少数者(LGBT/SOGI)に対する対応を抜本的に強めることは、誰もが過ごしやすい避難所生活を送るうえでも重要な課題である。更衣室や入浴施設は、ひとりずつ使える時間帯を作ることや、下着、生理用品、ヒゲソリなどの支援物資を、男女別としない仕組みにすること。
- 一時避難所によっては、情報が入手できないところも散見される。テレビやラジオを設置し、改善すること。また、快適に過ごすことができるよう畳などを設置すること。収容避難所には、冷暖房を付けるとともに、トイレは主として洋式に改修すること。また、台風などの災害では、スーパー・コンビニなどが閉店する中での避難を余儀なくされる場合もあり、衣類やあたたかい食料が避難者にいきわたるよう備蓄の工夫をすること。
- 福祉避難所については障害者や高齢者などの避難所としての機能を発揮できるよう万全を期すことが求められている。現在168か所を指定しているが、施設が被災し使用できない場合も想定し、指定箇所を抜本的に増やすこと。また、障害者や高齢者などの要配慮者が避難所をたらいまわしにされないように、直接、福祉避難所への避難を個別避難計画で位置付けること。さらに福祉避難所においては、通信、照明、空調、換気設備及び医療機器等の確保・維持が必要であり、呼吸器機能障害者などを受け入れる場合は電源の確保が絶対に必要となる。停電に備え、福祉避難所開設予定施設や高齢者施設などに非常用自家発電設備の設置をすすめるために市独自の補助制度をつくること。また、発電機等に必要な燃料の確保を市の責任ですすめること。
- 「避難行動要支援者名簿」に登録されている人のうち、個別避難計画が立てられているのは約13%に過ぎないのは大問題である。名簿登録から漏れている方も含めて、避難誘導、具体的な移動の手段の手配などについて、通常時からきめ細かい個別計画を市の責任で策定するなどして対策を強化すること。被災時に施設運営で一番の課題となる職員不足については、協定を結んでいる他都市などとの協議をすすめ、福祉避難所に対する受け入れ体制を事前に確立すること。
- 市民が家族の一員としてのペットと一緒に避難行動をとる「同行避難」は、被災者を救護する観点から、災害時にも被災者がペットを適切に飼養管理できるよう支援することが重要である。これは、ペットの飼い主の早期自立を支援することであり、ペットの健康と安全の確保にも寄与することとなる。また、ペットを飼養しない多くの被災者とのトラブルを最小化させ、すべての被災者の生活環境を保全することにも繋がる。しかし、本市の「避難所運営の手引き」には、ペットとの「同行避難」の位置づけがほとんどないに等しい。環境省が策定している「人とペットの災害対策ガイドライン」に基づいて、ペットの一時預かりや避難所での飼養環境の整備などの支援体制をつくるとともに、避難所を運営する人、市の職員に周知徹底を図ること。さらに、ペット連れで避難する「同伴避難」ができるように珠洲市などの例にならい専用のテントを必要数用意すること。
- 河川の流水量を「流域治水」でコントロールするため、必要な河川には農業用ため池を治水池へ転用、学校の校庭・公園などに雨水を一時的に貯める流域対策等を行い、流域からの流出量の抑制に取り組むこと。また、耐越水堤防を整備し、避難する時間が確保できる対策を強めること。さらに、河床掘削、老朽化した護岸のかさ上げ・改修、バックウォーターや内水氾濫対策、バイパス雨水管整備などの氾濫防止対策を県とも協力しておこなうこと。
- 市内の二級水系13のうち、河川整備方針・計画があるのは、那珂川、御笠川、瑞梅寺川、樋井川、多々良川、湊川の6水系だけであり、すべての二級水系の整備計画の策定を県に求めること。
- 本市が管理する25の準用河川のうち、七隈川については近年溢水が起きていないことをもって整備を中断しているのは問題である。未整備部分の整備を早急に行うとともに、民有地でも補助金を出して雨水貯留浸透施設の整備をすすめる国のグリーンインフラ支援制度を活用し、貯留施設の新設を福岡大学に促すこと。
- 東区の若宮商店会に隣接する松崎第11雨水幹線や、南区の老司ゲートのような浸水が頻繁に起きている場所については、被害状況を丁寧に掌握した上で、二度と家屋や商店、車両などへの浸水被害が起きないようにすること。また、流量増加、水路の形状改良、雨水流出抑制策など有効かつ具体的手立てを講じること。
- 人的被害を与える可能性のある防災重点ため池は市内で257か所あるが、満水状態の時に地震などの自然災害で決壊した場合に想定される浸水の範囲や深さ、避難場所などの情報をまとめた「ため池ハザードマップ」の作成は85か所に過ぎない。すべての防災重点ため池について、ハザードマップの策定や暫定的な避難方法の住民周知をするとともに、防災重点以外のため池についても調査点検を行うこと。
- ため池の維持管理を担ってきた水利組合などの人員減少と高齢化が進んでおり、行政の関与が求められている。そもそも豪雨時の洪水対策を水利組合に任せることは無理がある。行政の責任体制を確立し、ため池の耐震性や豪雨による洪水の危険性などの調査や防災工事を早急に完了させるための財政措置を国に求めるとともに、市独自でも調査、工事をすすめること。
- 能登半島地震では、原発についても深刻なトラブルが発生した。志賀原発では冷却用の外部電源の変圧器が損傷し、非常用発電機も停止し、またモニタリングスポット116カ所の内18カ所でデータが取得できなくなった。さらに、重大事故時の避難ルート11路線のうち、7路線が土砂崩れ等により通行止めとなり、避難計画は机上の空論となった。これらの事態は、地震国の日本では大地震が起きないと言える場所はなく、玄海原子力発電所をはじめ原発はただちに廃止することが求められていることを示している。地域防災計画の原子力災害対策編について、災害対策基本法に基づくのではなく、原子力災害対策特別措置法に基づく計画に変更すること。また、全市民の放射能被害を想定し、国、県と連携して、市民の避難計画を策定すること。さらに、本市の避難計画は屋内避難を基本とするものであり、複合的な原子力災害に対応できておらず、全市民の放射能被害を想定し、福岡市から他の都市への避難を含めた計画を立てること。あわせて、専門家がひとりもいない防災会議に、原子力・原子力発電の専門家を入れること。
(14)消防
- 2023年度の一般会計の歳出に占める消防費の予算の構成比は1.6%しかなく、政令市最低レベルとなっている。また、本市の消防本部職員1人当たりの管轄人口は1414人と政令市最高であり、京都市や大阪市のほぼ2倍という状況は異常である。本市の消防の体制は、国の指針に照らして、ポンプ車2台が足りず、人員は60人も不足しており、警防要員も、救急要員も、予防要員も、充足率が足りていない。抜本的に予算を増額し、早急に「消防力の整備指針」に基づき、消防機材も人員も100%充足させること。
- コロナ感染や熱中症対応などで、救急隊員にはさらなる負担が強いられており、現場は疲弊している。本市の救急要員は、国の指針に照らして90.6%と低すぎる。市民の命を守るために、これ以上の放置は許されず、抜本的に予算を増額して、救急隊員を増やすこと。
- 2024年度の本市の消防局におけるハラスメント事例はゼロだとされているが、日頃からの署内での人権侵害、パワハラ等の根絶に向けた取り組みをさらに強めること。また消防職場での暴力・パワハラ・セクハラに対応するために、弁護士など第三者が参加する機関を設置すること。
- 消防組織に女性消防吏員を増加させることは、子どもや高齢者、災害時の要支援者など多様な住民への対応力が向上するとともに、育児・介護などそれぞれ異なる事情を持っていることを同僚が理解し支援する組織風土が醸成されることにより、組織力の強化、士気の向上が図られるとして、消防庁は2026年までに全国で女性消防吏員比率を5%に引き上げる目標をしめしている。しかし本市の女性消防吏員の割合は3.3%に過ぎず、現状のままでは達成を見込めない。したがって、女性が安心して働ける職場環境づくりに努め、女性の活躍の場が広がることによる新たな課題や問題点にも柔軟に対応するなどして、女性消防吏員を目標に照らして計画的に増やすこと。
4、気候危機打開へ、地域と地球の環境守る先頭に
気候危機の打開は、日本国民にとって待ったなしの課題となっている。猛暑による熱中症の増加や、線状降水帯・ゲリラ豪雨などによる水害等によって、国民の命が脅かされ、農業や水産業にも大きな被害を与えている。同時に、気候危機打開への省エネルギーと再生可能エネルギーの取り組みは、新たな仕事と雇用の創出の効果が地域経済にも波及し、持続可能な地域循環型経済への転換をすすめるなど大切な課題であり、本市として対策が求められている。
(1)福岡市地球温暖化対策実行計画
- 「第5次福岡市地球温暖化対策実行計画」は、政府よりも10年早い「2040年カーボンニュートラル」を掲げ、2030年までに市域の温室効果ガス排出量の50%削減目標を立てているが、その内の46%は国の施策で削減されることを前提としている。ところが、英独が1990年比でCO2を4~5割減らしているのに対し日本は1割減にとどまり、再エネ電力の割合も2023年の電力の比率は、英国は46%、ドイツは52%なのに日本は24%と完全に「周回遅れ」となっている。したがって、2050年実質ゼロを目指すには2030年までにCO2を50~60%削減することが必要であり、この立場で本市として計画の見直しを国に求めること。また、石炭火力から2030年までに計画的に撤退するよう国に求めること。さらに、輸入価格高騰がエネルギー自給率13.3%の日本経済を翻弄しており、100%国産エネルギーである再エネの利用推進と省エネの取り組みをあらゆる分野ですすめるよう国に求めること。
- 本市は「実行計画」を策定し、あわせて「気候非常事態宣言」も行った。しかし実行計画は、原単位を成果指標にするとしてエネルギー消費量の削減目標を持たず、経済活動が増えれば全体として排出量が増えても構わないという計画となっており、現実に、2022年度の温室効果ガス排出量は、前年より42万tも増加している。また、再生可能エネルギーの2030年度の導入目標も40万kWのまま20年前から全く同じ数字を掲げ続けており、2023年度の再エネ設備容量は26.1万kWと前年比でわずか1.3万kWの増加にとどまっている。このままでは「2040ゼロ」は画餅に終わる恐れが強く、実行計画の抜本的な見直しが求められる。したがって、実行計画の「2030年50%削減」という目標を大幅に引き上げるとともに、エネルギー消費量の削減目標について全体目標と分野ごとの目標を明確に持つこと。また、再エネ導入の新たな野心的な2030年度目標を持つこと。
- 「実行計画」を本気で推進していくためには、港湾や大規模工場・事業所、医療機関、交通・運輸事業者などとのCO2排出量削減をどのようにするかが重要であるが、本市では、民間事業者に促す程度で終わっている。川崎市では、条例をつくり、民間事業所に市の2030年度削減目標に見合う目標、進捗状況を毎年報告することを義務付け、市はそれを市民に公表する仕組みを作っている。本市でも、条例をつくり、民間事業所のCO2削減目標に行政が一緒に責任を持つ仕組みをつくること。
- 「実行計画」を受けて、「市役所率先実行計画」をつくり、各局などでも取り組みが進み始めてはいる。例えば、港湾空港局では、博多港の港湾施設や物流活動における脱炭素化の計画を作成した。一方で、学校、公民館、市営住宅、市場をはじめ、大部分の市有施設には具体的な省エネや再エネの目標や計画さえない。したがって、「実行計画」を「福岡市基本計画」の部門的計画とするのではなく、本市の上位計画と位置付け、全局横断型の体制で推進を図ること。
- 「実行計画」を達成するためには、進捗状況を福岡市環境審議会などで十分な時間を取って協議・検討するとともに、市民の意欲、知恵、協力が反映できるようにするため、中高校生や大学生など若者をはじめ、広く市民や企業・団体が参加する推進協議会議などをつくり、計画の推進を図ること。
(2)省エネルギーを推進する
- 省エネに大きく寄与する民間住宅の断熱は、家庭部門におけるCO2排出削減のカギを握る。2025年4月から、新築・増改築の住宅には断熱性能等級4という省エネ基準が義務付けされるが、本市は、この基準をクリアしている住宅戸数の把握もしていないのは問題である。鳥取県の先進例に倣い、市として基準に適合する住宅を認定し、消費者向けの広報や普及啓発を行い、事業者を育成し、認定住宅建設への助成をおこなうこと。
- 学校をはじめ公共施設等での断熱改修は、子どもたちをはじめ多くの市民に断熱の大事さを体感してもらうなど、市民啓発にもつながる。さらに、地場中小企業の仕事起こしとなり、経済波及効果も期待できる。省エネを推進するために公共施設の断熱化に今すぐ取り組むこと。
(3)再生可能エネルギーの導入拡大をすすめる
- 九州電力送配電(株)は、電力供給量が需要を大きく上回っているとして原発を稼働させながら太陽光発電事業者に発電停止を求める「出力制御」を2018年10月以来行ってきており、市が設置している6カ所のメガソーラにおいても大きな損失となっている。このことは、原発の出力抑制はしないまま再エネで作った電気を捨てる“原発優先給電”の仕組みが公共でも民間でも再エネを拡大する障害となっていることを示しており、再生可能エネルギーの導入推進を図る本市の「地球温暖化対策実行計画」の推進が妨げられている。したがって市は、九電と国に対して原発優先の「給電ルール」を見直し再生可能エネルギーを優先するよう強く要求すること。
- 本市の建築物等での太陽光発電は、環境省によれば各種再生可能エネルギー発電可能性量の中で最も多く、ポテンシャルは本市で年間3060MWとされているが、実際の発電量は143MWにとどまっている。市内建築物等への太陽光発電の積極的な導入を促進すること。
- 福岡市における風力発電は、風況が充分になく導入は困難と本市は否定的だが、環境省によれば、約90万世帯分の年間電力に当たる約4600GWhもポテンシャルがあるとされている。風力発電に対する位置づけを抜本的に据え直し、他都市の実践に倣い、自然環境に配慮する仕組みを盛り込んだ上で、風速7m毎秒以上の海上などで積極的に取り組むこと。
- 市役所本庁舎をはじめ、学校、病院、ごみ焼却工場、地下鉄、上下水道などすべての公共施設で使用する電力を2030年までに100%再生可能エネルギーに転換すること。また、市有施設・市有地で太陽光や風力、地熱、小水力などの発電の活用を環境保全や住民の健康に配慮した上で抜本的に拡大すること。あわせて、本市の公用車についてはガソリンを使わない電気自動車化をすすめ、高速充電設備の野心的導入を図ること。
- 政府は再び原発推進へと大きくかじを切り、全国で再稼働をすすめ、設計年数を超えて60年以上も老朽原発を稼働し続けるとしている。しかし、原発に「絶対安全」などありえず、とりわけ世界有数の地震・津波国である日本での原発稼働ができないことは東京電力福島第1原発の大事故の最大の教訓であり、能登半島地震においても志賀原発の危険が現実問題となって国民的な不安を増大させた。温暖化対策を口実に原発の再稼働、新増設に固執する国の方針に反対し、「原発ゼロ基本法」を制定し、「原発ゼロの日本」を実現するよう、国に求めること。
- 市長は九州電力と国に対して、玄海原子力発電所3、4号機の即時停止と早急な廃炉を強く要請すること。あわせて、九電に対してどんな微細な事故であってもすべてを直接福岡市へただちに連絡させるとともに、発電施設の新増設や原発を稼働及び延長運転をしようとするときは、事前に福岡市に丁寧に説明を行い、事前了解を得る内容に「原子力安全協定」の見直しをすること。
(4)熱中症から命と健康を守るために
- 今年の夏は気象庁が2年連続で最も暑いと発表しており、太宰府市では35度以上の猛暑日が62日で国内最多記録を更新した。そういう中、今年の熱中症搬送者数は1160人で、救急搬送のうち32%は住宅内で発症しており、予防にはエアコンの使用が不可欠であるが、物価高騰のなか、電気代を気にしてエアコンを使わない方が少なくない。市独自に電気代支援を行うこと。
- 内閣府の2023年度消費動向調査によれば、年収300万円以下の世帯では17%がエアコンがないという回答をしており、これは福岡市でいえば5万4570世帯、全世帯の約6.6%となる。また、現実に市内で生活保護を利用している家庭では418世帯にエアコンが設置されていない。一方、エアコンの導入設置は約9万円かかり、低所得世帯にとって、新たな購入設置や買い替えは財政的に簡単ではない。練馬区では、低所得で1台も動くエアコンがない世帯に対して、10万5千円の助成制度をつくっている。すべてのエアコン未設置世帯への購入・設置費の助成をおこなうこと。また、大家や住宅管理会社のエアコン設置への助成制度を本市独自に作ること。
- クーリングシェルターを活用した熱中症対策は、暑くなり倒れそうになって駆け込むのではなく、その前に、避難できる施設の活用が重要である。市民センターや公民館、図書館などの一定の空間のある部屋をクーリングシェルターとして位置付けた公的施設を抜本的に増やすこと。また、民間施設の協力を広げるとともに、休憩のためのイス、水分補給のための水や清涼飲料水、タオル、保冷剤など、必要な物品は予算もつけて市から提供すること。
(5)JR騒音
JR福岡貨物ターミナル駅では、貨車の連結やブレーキの音、リフトの作業音などが、深夜2時まで鳴りやまず、周辺住民の受忍限度を超えている。市は、日本貨物鉄道株式会社に対し、貨車の運行時間を夜12時までとし、深夜の騒音を伴う作業をやめるよう、国土交通省や環境省とも連携を図って同社に実行させるとともに、防音壁を設置させ騒音被害を軽減させること。
(6)干潟保全
今日、世界で、干潟は水の浄化など自然の恵みをもたらすものであり、温室効果ガスである二酸化炭素の吸収にも重要な役割を果たしており、保全が重視されてきている。本市の和白干潟は、日本で2か所しかない自然海岸が残る干潟であり、絶滅が心配されている渡り鳥(クロツラヘラサギ・ツクシガモなど)や、干潟の生きもの(オオミミガイ・ハクセンシオマネキ等)の渡来地・生息地であるため「国指定鳥獣保護区」にも指定されており、日本海に面した干潟では最も底生生物の種の多様性が高い。本市は、条約登録をこの20年間、「将来的な課題」と言い続け何もしていない。登録に向けた地域住民の理解を速やかに得る手立てをとること。和白干潟の「特別保護地区」指定を国に申請し、ラムサール条約登録地にされるよう積極的な取組みを推進すること。
(7)ごみ
- 本市では、年間約5万8千tのプラスチックがごみとして排出されており、2026年度からプラスチックごみ分別収集によるリサイクルの導入を予定している。しかし、この費用を自治体や消費者が負担することには、生産者が、製品の生産・使用段階だけでなく、廃棄・リサイクル段階まで責任を負う「拡大生産者責任」の立場からみて道理がない。プラごみの発生抑制とともに、製造企業の責任による回収と再生利用をおこなうよう国に求めること。
- 家庭用ごみ袋の値段は、全国の市町村では1リットル当たり0.8円程度なのに福岡市では1円と全国平均よりも高い。また、国の有料化手引きでは「住民の受容性」も勘案し負担額の住民意向調査をするよう定められているにもかかわらず、物価高騰以後、本市は調査すら行っていない。家庭用ごみ袋代の値下げを行うこと。また、高齢者や障害者などを対象にした粗大ごみの持ち出しサービスは無料にすること。
- 本市は「第5次福岡市一般廃棄物処理基本計画」において、2030年度のごみ処理量を53万tとするとしているが、これは全く現在の処理量と変わらないもので、減量する目標となっていない。「福岡市廃棄物の減量及び適正処理等に関する条例」第3条には、「市は、あらゆる施策を通じて、廃棄物の減量を推進する」と責務が謳われていることからも許されない。したがって、市は、人口や事業所が増えれば全体としてごみが増えても構わないという原単位でのごみ減量の見方を改め、ごみ処理量の抜本的な削減を明確にした目標とするよう「第5次基本計画」を見直すこと。
- 家庭ごみの収集運搬労働者は、人口も処理量も増え仕事も増えているにもかかわらず、その賃金は低水準に据え置かれており、委託企業の多くで定期昇給がない。夜間戸別収集を維持・継続するためには、委託労働者の雇用の安定と労働条件の改善は不可欠である。したがって、民間並みの賃金引上げや定期昇給が実現できるよう委託費を引き上げ、労働条件の改善を図れるよう市が責任を持って委託企業を指導すること。
(8)盛土・土砂災害警戒区域の開発行為
本市として、危険な盛土の総点検と情報開示をおこない、緊急な安全対策を急ぐこと。また、土砂災害特別区域には盛土をさせないことや、建設発生土は建設工事の発注者などが最終処分地まで適正に処理する責任を持つことを義務づけることなど、違法な盛土造成への規制を強化すること。さらに、危険区域への新たな宅地などの開発、住宅等の建築を禁止するとともに、危険区域の管理を個人所有者まかせにせず、土地の買取りを含め、市としての管理を強めること。
(9)緑・公園
- PFI法改正で対象施設が都市公園にまで拡大されたため、公園が民間企業の金儲けのための施設に変質させられてきている。本市では、水上公園、西南の杜の湖畔公園、動植物園、高宮南緑地において、PFIによって公園の一部が整備・運営され、民間活力が活用されてきた。さらにこれから、東平尾公園、清流公園、明治公園、香椎浜北公園、長垂海浜公園では、PFIによって公園を丸ごと整備・運営しようとしている。都市公園を儲けの場とするパークPFI はやめること。
- 「新・緑の基本計画」については、市民の意見を反映させ、政府よりも10年早く温室効果ガス排出実質ゼロにするという本市の脱炭素目標に見合った形で、樹木の保全及び緑化の推進をする計画へ改定すること。
- 東京の神宮外苑再開発計画では多数の樹木を伐採することに反対運動が起きユネスコ諮問機関のイコモスが警告を発した。また本市でも須崎公園の樹木伐採に端を発して、都市の緑の保全は市民的な要求となっている。国際的には、気候危機やヒートアイランド対策として、CO2を吸収し気温を下げる樹木の役割が注目されており、樹木の枝葉で覆われる面積である樹冠被覆率の目標を持ち、樹木を増やしている。市として樹冠被覆率を目標と定めること。
- 国道などの基幹道路沿いの街路樹等を、「地元住民からの要望」などと言って伐採している。樹木の適切な管理・保全を徹底すること。
- 本市がすすめる「都心の森1万本プロジェクト」は天神アクロスの緑4万本と比しても余りにも少なく、天神ビッグバンや博多コネクティット等の大型開発による環境破壊の「免罪符」でしかなく、計画を改めること。
5、物価高騰とコロナの影響に苦しむ中小企業・小規模企業者、農林水産業を支援し、地域経済の立て直しを
(1)中小企業・小規模企業者支援
- 本市が行ったアンケートでは中小企業の売り上げはコロナが流行する前と比べて6割しか回復していない。さらに物価高騰を価格に「おおむね反映」できた業者は15%に過ぎない。コロナ・物価高騰の影響は本市中小企業・小規模企業者に重くのしかかっている。
「第3次プラン」に「コロナ」や「物価高騰」に苦しむ企業を引き続きしっかりと支援することを位置付け、今年4月で打ち切った「燃料費等高騰の影響を受けた事業者支援」など直接支援を復活させること。 - 「ゼロゼロ融資」の返済が本格的に始まっており、物価高騰と合わさって資金繰りに苦しむ業者が増えている。保証協会や金融機関が制度融資の追加融資及び措置・返済期間の延長等の条件変更に柔軟に応じるように要請すること。
- 2023年10月からインボイス(適格請求書等保存)制度が開始された。小規模事業者、個人事業主やフリーランスを取引から排除し、淘汰を推しすすめるものであり、ただちに廃止するよう国に求めること。
- 重点施策として位置付けているスタートアップは雇用や税収の成果が不明瞭であり地域経済への影響はわからない。「これからモノになるかどうかわからないスタートアップ企業には手厚くやっている」という声が市内の業者から多数上がっている。これまで本市の経済と雇用を担ってきた既存の地場中小企業・小規模企業者向けの振興予算を抜本的に増やすこと。
- 環境の改善整備で住民に喜ばれるとともに、波及効果の大きさで地域経済対策としても大きな威力を発揮している用途制限のない住宅リフォーム助成制度を創設すること。個々の商店の改装や店舗等で使用する備品の費用などへの助成を行う「商店リニューアル助成事業」を新設すること。
- 市の公共工事等を受注した企業や下請け業者等に、市が定める賃金以上を支払うことが義務付けられる公契約条例は、川崎市、相模原市などの政令指定都市を含む全国で80を超える自治体に広がっている。発注する公的機関と受注者等の間で結ばれる契約(公契約)において、生活できる賃金をはじめ、人間らしく働くことのできる労働条件を保障する公契約条例を制定すること。
- 福岡県建設労働組合の賃金調査では設計労務単価に比べて、6割程度の賃金しかもらっていないことが明らかになった。市発注の公共事業の下請け、孫請けの賃金について、国から依頼された調査結果を準用して設計労務単価が支払われているかを調査するとともに抜き打ちでの調査も行うこと。さらに、本市の総合評価方式の評価に労務単価を守らせる項目を採用し、建設労働者に適正な賃金を支払われるようにすること。
- 公共事業を地元中小企業、特に小規模企業者へ優先して発注すること。また、公共事業の在り方を生活密着型に改めて中小企業の仕事を増やし、分離・分割発注の拡大、地場中小企業・小規模企業者向けの発注割合を増やすこと。
- 競争入札資格のない未登録業者に対して、自治体が建設工事や修繕工事等を発注する小規模工事登録制度を実施すること。
- 所得税法56条の廃止は、家族一人ひとりの働きを正当に評価し、人権を尊重することにつながる。また、ジェンダー格差の是正、女性の地位向上と経済的自立への一歩にもなる。自営業・農業において、妻など家族従業者への給与を必要経費として認めない所得税法第56条の廃止を国に求めること。
- 中小企業経営の発展にとって採用と人材育成が決定的に重要である。中小企業が共同でおこなう求人活動や社員教育活動への支援を強めること。各分野のすぐれた技能者・職人の認定制度、報償金制度を整備・拡充し、すぐれた技術を継承すること。経営者同士が学び・交流できる場、各地の商店街や市場関係者が学び・交流できる場をつくること。同業種間、異業種間の学びと交流を応援すること。
(2)雇用・労働
- 過酷な労働条件、雇用環境で労働者を使い捨てにする働かせ方を強いる企業が少なくない。労働問題を県や国に任せるだけでなく、専門職員を配置した労働相談窓口を各区につくり、街頭相談や電話やSNSを使った相談を実施すること。調査、相談、啓発を網羅した、違法・脱法的な働き方をなくすための条例をつくること。
- 「働くあなたのガイドブック」の発行部数は10万人を超える高校生、大学生等の数に比して少なすぎる。抜本的に作成部数を増やすとともに、どのように配布し活用されているのかを把握すること。また、「働くあなたのリーフレット」を市内の高校、専門学校生、大学生全員に渡せるように作成部数を増やすとともに、労働者向けリーフレットを作成すること。
(3)農林水産
- 物価高騰が続き農業・漁業従事者に深刻な影響を与えている。肥料、資材、燃油、飼料など高騰分を補てんする市独自の施策を実施すること。
- わが国の食料自給率は先進諸国最低の38%に落ち込んだままである。肥料・飼料・種子などの大半も海外依存で実質10%以下という指摘もある。近年の世界的な食料危機が警告するように、「食料は金さえ出せば輸入できる」時代ではなくなっている。一方、国内の農業と農村は崩壊が急速に広がっており、近い将来、農業者の激減は必至である。このままでは、国内の食料生産も危うくなり、耕作放棄地が広がり、国土や環境の荒廃が一気に広がりかねない。食料供給の不安定化を見据えて、食料自給率の向上・回復を国政の柱に据え、農政の最大の目標に掲げて取り組むよう国に求めること。
- 農業と農村の歴史的衰退の流れを逆転させ、食料自給率の向上に本格的に転ずるためには、基幹産業と位置付け、農林水産関係予算の大幅な増額が不可欠である。農林水産業の振興に必要な予算を思い切って増額すること。
- 農業所得に占める政府補助の割合は、ドイツ77%、フランス64%だが、日本は30%と半分以下でしかない。価格保障、所得補償を抜本的に充実するよう国に求めること。
- 本市の農家の経営主の平均年齢が73.7歳となっている。農家戸数及び農業従事者数についても、依然として減少傾向が続いている。農家の後継者づくりについては、生活支援や資金、技術、農地の面での総合的な支援体制を整え、農業への新規参入者を増やすこと。
- これ以上耕作放棄地を増やさない手立てをとるとともに、活用については市民農園や体験農業、学校農園、農業ボランティアなどさまざまなチャンネルで市民の多くが農業・農村にふれ、生産にかかわる取り組みができるようにすること。
- 国が「みどりの食料システム戦略」で2050年までに有機農業による耕作面積を25%にするという目標に見合った戦略を福岡市は持たなければならない。そのためには有機農家を増やす必要がある。有機農業技術を学ぶことができる研修を市がイニシアチブをとって行ったり、技術指導できる人材を招聘するなど、有機農業に取り組んでもらうきっかけを作ること。有機農業に安心してとりくめるよう、収益の不安定期への手厚い補助を実施すること。学校・保育園・幼稚園の給食の食材に地元の有機農産物が採用されるように、有機にふさわしい価格で買い取り、その際の掛かり増しの経費を市が補助すること。
- 有害鳥獣による農作物への被害額は2967万円となっており影響は依然大きい。被害の多くを占めるイノシシ対策のためワイヤーメッシュ、電気柵の設置など予算を増やすこと。
- 各市場において脱炭素化計画を作成し実行すること。
- 民有林の人工林のうち、約8割が木材として利用可能時期を迎えている。森林の保全や花粉発生源対策のためにも主伐をすすめること。
6、憲法と子どもの権利条約を生かし、子どもを人間として尊重する教育・文化行政の推進を
(1)福岡市教育振興基本計画
教育の主人公は子どもである。教育は子どもの「人格の完成」をめざし、その尊厳を尊重しながら発達を支える営みであり機会均等でなければならない。ところが、現行の第2次福岡市教育振興基本計画は、教職員の抜本増や処遇改善、遅れている校舎等の大規模改造、体育館へのエアコン設置をはじめとする教育環境の整備など、教育行政の責務が抜け落ち「共育」として家庭や地域の責任をことさら強調するものとなっている。教育内容においては「キャリア教育」「グローバル人材の育成」「英語教育の推進」をセットとし、ICT教育を重視する等、財界からの要求を具体化した偏狭なものとなり、「福岡スタンダード」として画一的な子ども像を強調するなど、子どもたちが学びの意味を実感できないものとなっている。今、世界では戦争や環境問題、人権問題など多くの社会問題が発生し、子どもたちはコロナ禍や家庭の生活困難等にも直面し、葛藤と模索の中でともすれば希望を失いかねない中での学びを強いられている。現在策定作業中の次期教育振興基本計画においては日本国憲法が掲げる教育権や個人の尊厳を土台に、「子どもの権利条約」が掲げる一人一人の尊厳、発達の権利や意見表明権などの人権、最善の利益を保障し、教育の真の目的である「人格の完成」が土台に据えられた教育を実現するため、教育条件の抜本的改善と教育行政の責任について明確化を図ること。
(2)教育予算
人件費を除けば一般会計のわずか7%前後と抑制されている本市の教育予算は、施設整備・改善、学校運営等、教育活動の基盤を揺るがしており、抜本的に増額すること。人件費についても教職員不足を打開するとともに現在会計年度任用職員とされている専門職を正規化するために大幅増額を図ること。
(3)過大規模校など適正な教育環境への改善
- 31学級以上の過大規模校について、2024年度は小学校23校、中学校6校となり、昨年度より3校も増えた。プレハブ教室は小中合わせて38校155教室にのぼり、多くの子どもたちに不自由な学校生活を強いている。子どもたちは運動場で思いきり遊ぶこともできず、全員が参加する学校行事さえも難しくなっている。早急に過大規模校を解消するためのあらゆる手立てを尽くすこと。また、この問題は、無秩序な住宅開発による人口急増や、教育委員会が子どもの数についていい加減な推計を出していることが原因である。市は、開発規制は困難だとしているが、子ども病院跡地では住宅戸数の制限をおこなった実績があり、児童数、生徒数が多い地域の開発に対して制限をかける条例を制定すること。あわせて、教育委員会の児童生徒数の推計においては正確を期すこと。
- 毎日使用する印刷室や給食の受所、相談室やPTA会議室などの諸室には未だにエアコンが設置されていないところが残されている。エアコンの設置費用についてPTAなどに負担させることは問題であり、子どもや職員、保護者が活動するところはすべて教育委員会の責任で設置すること。
- 厳しい猛暑のため体育や学校行事が体育館で行えず、教育活動に支障を来しており、またPTAや現場からも設置を求める切実な声が寄せられている。国は、「緊急防災・減災事業債」を2025年まで延長し体育館へのエアコン設置を促している。断熱構造の問題と多額の経費を言い訳にして頑なに設置を拒否する姿勢は許されず、今後新設される学校の体育館にエアコンを設置するとともに、既存校にもただちに断熱構造を施しエアコンを設置すること。
- 学校のエレベーター設置について教育委員会は、2025年度までにわずか6校しか計画しておらず、その後の設置計画は、大規模改修時にとなっており、いつになるかわからない。障害のある子どもたちの地域で学ぶ権利を奪っており許されない。今年度も小学校で29人、中学校で10人の肢体不自由児がエレベーターのない学校に在籍しており、これは卒業に間に合わないものは放置をし、先延ばしにしてきた結果であり、教育委員会の怠慢である。しかも全国平均3割の設置率に対し、2025年までに2割に満たない。児童生徒の安全確保、教員等の負担軽減、学校のバリアフリー化によりインクルーシブ教育を促進するためにも、また避難所としての役割を果たすためにも、全ての小中学校へエレベーターを設置する計画を策定するとともに、要配慮児童生徒が在籍する学校への設置を急ぐこと。
- 学校のリフォームである従来の大規模改造工事については、築30年以上で未実施の学校が52校残されているにもかかわらず「長寿命化計画」を理由に40年経過するまで放置されようとしている。築年数が古い学校は老朽化がすすみ、危険個所も多い。大規模改造工事の改修ペースを引き上げ、未実施校については早急に終了させること。
- 2023年度に各学校から提出された学校施設改良等要望の項目は286件で、1校あたり1~2件と学校現場から出される声としては極めて少ない。しかも対応済みはわずか53件と20%にとどまっている。今年夏の公共施設を考える会の学校施設調査でも、また軒天やブロック塀の爆裂、アスベスト含有材の破損など多くの危険個所が見つかった。さらに、10月にはプレハブ校舎の天井が落下し児童に接触する事故も起きている。子どもや教職員の命に関わる問題であり、先延ばしは許されず、維持補修費を抜本的に増やし、各学校から要望が出された箇所については早急に対応すること。
- 学校施設ブロック塀改修事業は、2018年から開始され、昨年度末までに危険個所が19.7km完了したが、依然として10kmの改修が残されている。予算を増額して速やかに改修すること。また、通学路における危険なブロック塀については、補助事業の対象を抜本的に広げ、補助額を増額して、積極的に周知するとともに、危険なブロック塀の除去を早急にすすめること。
- 水泳授業は、海や川に囲まれた我が国において、命を守るために必要なものである。モデル事業として民間プールの活用や、複数校での共同利用が検討されているが、移動時間がかかり授業時間が短くなることや、すべての生徒が利用できるスペースはないなどの問題がある。また、小学生と中学生での体格の違いからくる事故のリスクが懸念される。さらに、新たな保護者負担増が行われれば水泳授業の機会均等も保障されなくなることも予想され、拙速な実施はすべきでない。すべての学校プールを維持し、水泳授業を暑い時期にも行えるよう施設整備を行い、教員の負担になっている水質管理の専門業者への委託や、水泳指導について教員の過度な負担にならないよう加配するなどの手立てをとること。
- 学校プールにおいては、老朽化でプール内にささくれができていることによる怪我などの事態が生じている。また、学校施設整備指針で設置が推奨されている日除けの設置が未だ76%にとどまっていることに加え、小さすぎて全員が利用できない施設も多い。さらに、プールサイドが熱すぎて危険との声に対し、プール用ビニール床シートを貼っているとのことだが、改修時に限定されており大半は放置されている。早急にすべての学校プールの改修を行うこと。加えて、周りの住宅や高層マンションから丸見えとなっているプールも多数見受けられる。必要な予算を確保して、早急に対応すること。
- 市内に学校施設は217校あるにも関わらず、学校用務員については拠点校方式として154人しか配置されておらず、以前の全校配置の時と比べ即応性が下がり、危険を回避し、快適な環境を整備することに支障をきたしている。学校用務員について、21校のみ配置の拠点校方式はやめ、各校最低1人、規模によっては複数配置すること。
- 今年の学校施設調査でも、アスベスト含有が疑われる波型スレートやPタイルの破損や劣化が多数確認された。市はアスベスト含有の可能性がある材料や使用箇所などを周知し、破損が見受けられる場合の応急対応や児童生徒への指導の依頼、教育委員会への報告などを通知しているというが、多くの教員や児童生徒が把握していない実態がある。アスベストの危険性や維持管理方法、処分方法について周知するとともに、アスベスト含有建材は早急に撤去すること。また市が保有するアスベストアナライザーも活用し検査を行うこと。
(4)学校給食
- 学校給食は、食育基本法で定めている食育であり、教育の一環である。国は学校給食費無償化に背を向けているが、2023年9月時点で小中学校とも給食費を無償化した自治体は全国で547となった。義務教育は無償とする憲法の立場からも、学校給食費を無償とすることは当然のことである。学校給食費の無償化を実施すること。
- 他都市では、有機農業を推進しながら、できた農作物を学校給食に使うという循環型の取り組みがすすめられており、東京都世田谷区では、他都市の有機食材を購入して有機給食を行っている。給食に使うまでの供給量はすぐに賄えなくとも、全校一斉ではなく、一部の学校で使ってみることで、地元有機農業の振興にもつながる。また、子どもたちへ安全で質の高い給食を提供することができる。本市でも有機給食を実施すること。
- 2023年度の中学校の喫食時間は平均で21分である。現場では授業が長引いたり、準備に手間取ったりして喫食時間が10分以下になる場合も少なくない。子どもたちや教職員からも給食時間は短すぎるという声があがっている。その主な原因は中学校給食がセンター方式であることから、返却時間に余裕がないことにある。給食センターと協議し、柔軟な対応を求めるとともに、生徒一人一人に応じた十分な個別的配慮を講じ、学校が必要と判断すれば、給食・喫食時間を長くすること。
- 小学校の給食室へのエアコン設置は、現在69校で2024年度中に70校になる見込みだが未だ半分以下である。猛暑の中では40℃を超えるとの訴えもある環境での調理業務は過酷である。学校給食室にも準用される「大量調理施設衛生管理マニュアル」では、調理場の温度は25℃以下に保つことが望ましいとされており、衛生的にも調理員の健康にとっても重要である。大規模改造工事を待たずに、速やかにすべての給食室へエアコンを設置すること。
- 本市の中学校給食はPFIのセンター方式で、1万食を超える大量調理、職員の低賃金など、食育としての給食とは程遠い実態となっている。小学校給食においては、自校方式であっても、146校中73校と半分が民間委託され、ここでも低賃金の職員が、子どもたちと関わりない形で業務を行っている。しかし、学校給食は子どもたちの成長を育み、食育にも資するものであり、営利を追求する民間への委託はなじまない。中学校給食のセンター方式並びに小学校給食の民間委託はやめ、顔の見える安全性の高い直営・自校方式に戻し、調理員は市の正規職員として配置すること。
(5)少人数学級
少人数学級は、学習意欲の高まりや不登校児童・欠席者の減少など、教育的効果が数字として表れ、児童生徒の自尊感情も高まることが実証されている。本市においては、35人学級が実現したものの、現場では20人~30人程度の学級の実現を求める切実な声が広がっている。国に対して法改正や予算の増額を求めるとともに、実現するまでの間、市独自に採用を増やし20人学級をめざすこと。
(6)ICT教育
- 教育におけるICTの活用については、子どもたちの学びを補助する1つのツールとしての位置づけを明確にし、事実上の強制をやめ、教員の自主性・自立性を尊重すること。ICT支援員については各学校に月2回程度の派遣ではニーズに対応できておらず、全校に1人ずつ常駐させること。
- タブレットの活用により、子どもの成績、日々の生活などが「学習ログ」としてクラウド上に蓄積されることになる。これらの個人情報等の教育データを民間産業に提供する事は許されず、厳正に管理すること。
- デジタル教科書については、現場や有識者から学習効果への疑問や子どもの健康への懸念が出され海外では見直しの動きも起きてきている。視力障害のある子どもに見やすいなどの点はあるものの、全体的な導入には多くの懸念があり本格導入については慎重にすること。
- ICT教育にあたっては、基本的人権を基軸とした「デジタル・シティズンシップ教育」を重視すること
(7)教職員の働き方改善、採用のあり方
- 教師不足は引き続き深刻であり、年度当初から担任不在となる異常な事態を作り出している。これは長年正規教員の採用数を抑制し、500人規模の定数内講師で穴埋めするやり方によって引き起こされてきた問題である。また産休・育休代替で運用できる講師の確保にも無策だった結果でもあり、教育委員会の責任は重大である。講師頼みの定数確保方式をやめ年度内の休暇取得見込みを正確に把握した上で、正規教員の抜本的な増員を図ること。その際、教養・専門試験結果を主要な選考の判断材料とせず、経験や意欲等、総合的に判断し有能な人材確保を図ること。また、市立高校を含め、非常勤講師の処遇を抜本的に改善すること。国に対して、義務教育給与の国庫負担率を現状の3分の1から2分の1に戻すよう求めること。
- 教員の労働時間については、6割以上が過労死ラインを超える深刻な実態は改善されておらず病気休暇者数は365名、そのうち精神の病によるものは156名と史上最高になっている。教職員の長時間勤務については、学校閉庁日の設定やICTの活用、意識改革などでは、根本的な解決に程遠く、教員一人あたりの持ち時間数を小学校で週20時間、中学校で18時間程度を実現するよう現場に指導・助言すること。「改革推進プログラム」は早急に改訂すること。
- スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、学校司書等、極めて重要な役割を担っている専門職が、本市においては会計年度任用職員という非正規雇用でしかも数校かけもちの業務形態という異常な働かせ方になっている。現場のニーズに応えられるようにするためにも、国が定数化するまでの間、本市独自に正規雇用とし、まずは全校に1人以上配置すること。
- 教員は、夏季休業期間中にも、ワックスがけや壁塗り、草刈り、会議や校内研修等に忙殺され休暇を取得しにくい状況になっている。学校閉庁日の設定では何の改善にもなっておらず、本来、教員がやる必要のない環境整備等の業務は、行政の責任で他の公共施設と同様に専門の地場業者に委託するとともに、会議や研修等は夏季休業期間中には原則実施しないよう指導すること。
- 福岡市内において、部活動の全員顧問制の廃止等を求める教職員組合が結成され賛同の声もひろがっている。顧問になることによって時間外活動を余儀なくされ、教員の大きな負担となる事態は問題であり、強制にならないよう現場を指導すること。部活動指導員や支援員のさらなる増員を図ること。部活動の地域移行については、学校教育との関係整理、費用の自己負担増や指導者確保等、未解決の問題が山積しており、拙速な移行を行わないこと。
(8)教育のあり方
- 合理的な理由なく、子どもの表現の自由を規制し、人権侵害となっているいわゆる「ブラック校則」については、世論と運動を受けて、一定の見直しが行われてきたものの、未だ髪型や服装、アンダーウェアの色、眉毛の揃え方などに関して、事実上の細かい規制が残っている。細かい校則規定は、明確なハラスメントだと捉え、学校任せにせず、子どもの権利条約に基づき、教職員、子ども、保護者の話し合いによって絶えず見直すよう助言すること。また、「指導」と言う名目で「違反」した生徒を教室に入れないなど、教育を受ける権利を侵害する対応も残っている。人権侵害の「指導」についてはただちに根絶させること。ジェンダーフリーに反する男女別の校則規定についても見直しを指示すること。
- 本市で2023年度に把握されたいじめは、小学校で3143件、中学校で520件となり、合わせて過去最多を更新し、タブレットやパソコン、スマートフォンによる誹謗中傷等の人権侵害も後を立たない。いじめへの対応を絶対に後回しにしない命最優先の原則(安全配慮義務)を確立し、被害者の安全を確保し、加害者にはいじめをやめるまでしっかり対応すること。そのためにも些細なことにも対応できるよう教職員・保護者の情報共有の徹底について現場を指導すること。また「重大事態」が発生した際の調査については、改訂されたガイドラインを現場に徹底するとともに、速やかな対応ができるよう教育委員会として現場を援助すること。
- 子どもたちは、インターネット等により非科学的で、歪んだ情報に触れ、予期せぬ妊娠に直面したり、性暴力性犯罪の被害者になったりするリスクの中で生活している。人の受精や妊娠の過程は取り扱わないとする時代錯誤の学習指導要領「歯止め規定」は、撤廃することを国に求めるとともに、これに縛られることなく科学的な「包括的性教育」を徹底すること。本市作成の「性教育の手引き」については、国際基準に照らしても大きく立ち遅れており、LGBTQ+についての記載を含む科学的なものへと全面的に改訂すること。
- 全国一斉学力テストや本市独自の「生活習慣・学習定着度調査」は子どもと学校に管理と競争を押しつける以外の何物でもなく、子どもと教職員を疲弊させ、精神的ストレスを増大させている。全国学力テストはやめるよう国に求めるとともに、参加をやめ、本市独自調査も中止すること。偏差値競争の温床であり、保護者の経済負担となっているフクトをはじめとする業者テストは認めないこと。
- 学習指導要領に基づき実施されている現行の道徳科については、特定の価値観を押し付け憲法や子どもの権利条約に反するものとなっている。道徳教育は子ども一人一人が自分の価値観を高めながら、市民道徳を身に付けられるものになるよう学校教育全体で取り組み、内心の自由を侵す「評価」はやめること。
- 「2分の1成人式」は、親への感謝を実質強要し、様々な事情を抱えた子どもたちや保護者にとってはストレスとなっている。「起業が大事」という特定の価値観を押し付ける「アントレプレナーシップ教育」とともにやめること。
- 憲法違反の安保法制のもとで、自衛隊と米軍の一体的な運用が加速化し、敵基地攻撃能力の強化によって、自衛隊が戦争の突撃部隊とされる危険が高まっている。「殺し殺される軍隊」としての性格を高めている自衛隊を職場体験先として選定しないよう学校現場に徹底すること。
- 暴力に他ならない教師による体罰や、人権侵害である暴言は、学校現場から根絶しなければならないが、未だに後を断たない。「体罰根絶宣誓書」への署名や唱和など形骸化した対策ではなく、子どもの権利条約や日本国憲法に対する教職員の認識を高める研修など、日常的な取り組みを充実させ、学校現場は子どもを権利主体として捉える場に変えるとともに、発生事実が判明した際は、厳正に対処すること。
(9)教育を受ける権利
- 生活保護基準の連続引き下げについて、憲法違反だとする判決が相次いで出されており、この基準に連動させ、「生活保護基準の1.25倍」としている本市の就学援助基準の異常さが明確になっている。長引く物価高騰が子育て世代をも直撃している中、就学援助制度の重要性はかつてなく高まっており、基準を抜本的に見直すこと。
- 就学援助の支給項目については、国が認めているクラブ活動費・生徒会費PTA会費はもとより眼鏡購入費についても追加するとともに、物価高騰を加味し、入学準備金を含む給付額全体を増額すること。
- 学校、徴収金や修学旅行費等について保護者の大きな負担となっており、義務教育は無償と定めた憲法に基づき、これらの経費を無償とするよう国に求めるとともに、就学援助を受けている世帯の保護者に、一時的に立替えを強いる後払い方式を改めること。
- 不登校児童生徒数は年々増加し、2023年度は5177人と前年度を約800人も上回り史上最高となった。学校が行き過ぎた管理や競争によって、子どもにとって息苦しい場になっていることの表れである。子どもを学校から遠ざけている要因を取り除くとともに、「不登校特例校」については、想定人数を抜本的に増やすとともに、各地に計画的に増設すること。
- 本市における不登校対策は、学校へ復帰させることを目的にされてきた。当事者や保護者にプレッシャーを与え、追い込むことになりかねない復帰率目標は廃止し、学校復帰を前提とせず、教育を受ける権利、人格の完成を保障する多様な受け皿を整備すること。「適応指導教室」についてはその名称を変更し、子どもの居場所、学びの場へと改変すること。
- フリースクールは様々な理由で不登校となっている子どもたちの重要な受け皿であるにもかかわらず、公的助成がないために、運営には大きな困難があり、保護者にとっても大きな経済的負担となっている。県のわずかな助成では到底足りず、市として助成制度を創設するとともに、国に対し財政措置を求めること。
(10)特別支援教育
- 特別支援学校が不足しており、プレハブで対応する等、教室不足が深刻な事態が続いている。校舎増築や増設など早急な対策を取り、図書室等必要な教室を整備すること。
- 自閉症・情緒障害特別支援学級は今年度一定増設されたとはいえ、未だ4割の設置率にとどまっており、ニーズに全く見合っておらず、9割近くになっている全国政令市水準からも大きく立ち遅れている。全校への設置を早急に実現すること。また多様な発達障害に対応できる指導教室を大幅に増やすこと。
- 特別支援学級については、8人を1人の教員が受け持つという現行の学級編成基準では、一人一人に行き届く教育は困難である。市独自に2人担任体制をとり、国に対して加配の財政措置を求めること。また、基準そのものを現行の8人から6人に見直すよう国に求めること。
- 特別支援学校や学級に配置する教員は、専門性を身に付けた人員の配置を原則とし、採用枠を抜本的に増やすこと。また、人員不足を補う方策として、学校の求めに応えられるよう、学校生活支援員や介助員を大幅に増やし、処遇を改善すること。
- 発達教育センターにおける2023年度の就学相談人数は、2676人と史上最高を更新しており、子どもとっての適切な進路を選びたいという保護者の願いは切実である。速やかな判断ができるよう相談体制の拡充・充実を図ること。療育センターや児童発達支援センター、保育園や幼稚園等との連携を深め、子どもや保護者の希望を最大限尊重した学びの場を保障すること。そのために必要なエレベーター等、バリアフリーのための施設整備や人員配置については遅滞なく行うこと。
(11)大学・高校の学費支援
- 高学費によって学生生活は限界にきている。私立大学の初年度納付金は平均で約148万円、国立大でも約82万円にもなっている。そのなかでアルバイトと貸与奨学金なしに学生生活が成り立たない状況が〝当たり前〟になっている。学生を支援するために特別給付金を復活させ対象も拡充すること。
- 学生の8割がアルバイトに従事し、3人に1人が貸与奨学金を借りている。平均で300万円の奨学金という「借金」をかかえて社会に出ざるをえない状況で、若い世代の抱える奨学金返済額は全国で10兆円にものぼる。学費引き下げ、給付奨学金の拡充、貸与奨学金の返済を国の責任で半分に減らすことや入学金制度の廃止を国に求めること。市独自の給付奨学金をつくること。市教育振興会高校奨学金は希望者全員が借りられるようにすること。
- 本市独自の私学助成は、1校平均約180万円で近年全く変わっていない。コロナ禍に加えて急激な物価高騰にある中で、保護者の負担軽減のためにも私学助成の拡充を図ること。
(12)図書館
- 図書館の資料収集経費が減っており、「新刊本がない」「借りにくくなった」などの声があがっている。資料収集経費をはじめ図書館予算を増やすこと。
- 図書館の仕事を具体的に担うのは、専門職である司書である。司書には、資料・情報を自ら適切に選択できるよう利用者に協力、支援するなどの役割がある。にもかかわらず、本市の図書館員の99%が会計年度任用職員となっており、正規職員はわずか1人であり、その待遇は、低賃金で、雇用継続の保証もないなど、たいへん劣悪である。専門職に相応しい待遇に改善し、希望者は正規職員にするとともに増員を図ること。
- 管理運営を民間企業に「丸投げ」する指定管理者制度は、図書館を営利追求の場に変質させる。司書の専門性の蓄積、長期にわたるコレクション形成、読書の自由を保障するためにも住民参加を大切にして直営で運営すること。
(13)社会教育施設
- 市議会議員による市政報告会は、市民の市政参加にとって重要であり、社会教育や生涯教育の拠点である公民館の目的内利用に位置づけること。
- 社会教育法で定められている公民館における禁止行為は、営利事業や宗教活動など、極めて限定的なものであり、市民の社会参加や自治活動を促すことに繋がる利用については認めるのが原則である。審査基準については、社会教育施設としての役割を明確にするとともに、誤った対応が起きないように公民館職員への研修、周知を図ること。
- 社会教育施設である公民館を単なる「貸館」にしてしまうコミネットでの申し込み受付は導入しないこと。
- 地域交流センターを使用した自衛隊イベントで学習室に来ていた中学生と思われる子どもに対して、自衛隊員が声をかけ抽選会に誘導するなど市民センター・地域交流センターで指定管理者による不適切な対応が多々生じている。市民が幅広く活用する公共施設における指定管理者制度については、事業者に対して市民への適切な対応を徹底するとともに、市が直接運営するよう制度を見直すこと。
- 南区における地域交流センターについては市民のニーズをよく調査して設置方針を早急に決定し計画を策定すること。
- 社会教育を支援する本来の役割を果たすため、館長や主事を補助する人員確保のための予算を増額するとともに、公民館主事の大幅な待遇改善を行うこと。
(14)文化・芸術
- 本市の文化振興費は2023年度の当初予算で36億円、一般会計の0.3%にすぎない。すべての市民の文化的に生きる権利、もっと自由に文化・芸術をつくり楽しむことを保障するために文化予算の抜本的な増額を行うこと。
- 来年3月末にオープンする拠点文化施設・福岡市民ホールは、収容人数の増加を理由に利用料金を市民会館より上げようとしている。地元の劇団や鑑賞団体にとって大きな負担となるため市民会館の使用料と同額にすること。また、地元の劇団や鑑賞団体を対象にした減免制度をつくること。ただの「貸館」にさせないためにも社会包摂の場として役割を果たすよう検討を行うとともに、舞台の創造、舞台芸術をささえる人材育成など本市における文化の拠点になるようにすること。
- 拠点文化施設内に整備予定の800席の劇場型ホールができたとしても、慢性的なホール不足は解消できない。演劇等の専門性に対応できる中規模ホール建設をさらに計画すること。
- 音楽・演劇練習場の4施設は高い稼動率のため希望者の多くが利用できない状況となっている。すべての行政区に設置する計画をつくること。また、ぽんプラザホール同様の小劇場を増設すること。
- 民間の劇場やミニシアター、ライブハウスは現状では商業施設や遊興施設として扱われ、何の支援もない。年間100日以上事業を行っている施設は劇場とみなして固定資産税の減免をはかるなど、積極的な支援を行うこと。
- すべての小中学生が少なくとも1年に1度は文化芸術に触れる機会をつくるために、全校が取り組める予算を確保し推奨すること。義務教育の期間だけでなく、就学前の子どもや、高校生、大学生に対する芸術鑑賞などの支援を強めること。
- 障害者・高齢者の芸術鑑賞・創造・作品発表などの機会を増やし、支援すること。
- 減免申請団体会員以外の入場者がいることをもって18歳未満の使用が半数を超えた場合に適用される市民センターでの使用料を減免しないという機械的な対応をやめること。
- すべての市民センターのホールで子どもが舞台を見えやすくするため子ども用クッションの数を増やすこと。
- 文化芸術振興財団が行っている「ステップアップ助成プログラム」の助成事業数をさらに増やし、それに見合う補助を行うこと。
- 本市の貴重な文化財である福岡城で、集客のために、歴史的根拠もなく、天守閣があったかのように、復元とはかけ離れたやり方を、巨額の税金を使って行うライトアップ事業はやめること。
(15)スポーツ
- スポーツ基本法では「スポーツは人々の権利」と謳われており、そのために市内でスポーツができる環境を整備することが求められている。本市のスポーツ施設の土日祝日の応募倍率は野球場、ソフトボール場が68.5倍、テニスコートが23.5倍などと毎年高倍率がさらに上がっており、国民のスポーツをする権利が保障されていない。そのことは、「福岡市スポーツ推進計画」で掲げている成果指標「身近なスポーツ環境に対する満足度」が56.5%と、初期値(2012年度)58.3%よりも下がっていることでも示されている。身近なスポーツ施設を新・増設すること。施設のトイレの洋式化や、空調など老朽化しているスポーツ施設は改善し、スポーツ用具については適宜、更新すること。また、競技人口が増えているボルダリングやスケートボードなどの公的施設など、160万市民が身近にスポーツ活動ができる施設を計画し、増設すること。
- 1年に1度もスポーツをしない障害者は約6割に及んでいる。障害の種類や程度にかかわらず、スポーツを行うことができる環境を作ることは、市の責任であり、市内体育館をはじめ、運動施設のバリアフリーをすすめるなど利便性の向上を図ること。また、拠点施設である「障がい者スポーツセンター」について、以前からの改修要望である、駐車場屋根の設置をすみやかに実施すること。多くの障害者が、スポーツやレクリエーションに親しむことができるためには、「障がい者スポーツセンター」が市内1か所では足りず、市有地を使って増設すること。
- 学校の施設は地域スポーツ活動の重要な拠点の一つであり、小・中学校のグランドは校庭開放によって地域のスポーツ振興に寄与しており、その必要な施設整備が求められている。その一方、防球フェンスが低すぎる学校があり、利用者や周辺住民から強い要望が出されており、スポーツ推進予算を充てて改善を行うこと。
- 福岡市総合体育館をはじめ各区の市立体育館の駐車料金が「受益者負担」だとして有料化されているが、スポーツ基本法第6条で自治体が「スポーツへの国民の参加及び支援を促進するよう努めなければならない」との規定からみて問題である。市民負担を増やす駐車料金の有料化はやめ、無料にすること。
- 体育館やプールの利用料金は、65~69歳が半額、70歳以上は無料となっている。高齢者の健康増進のために、65歳以上はすべて無料にすること。あわせて、福岡市内にある民間のスポーツ施設についても、市民が利用する際、利用料金の補助制度を作ること。
- 体育館やプールなど、スポーツ施設の管理・運営に指定管理者制度が導入されている。運営会社は利益を上げるために、トレーナーなどの人件費を抑制しており、そのため職員の離職率が高く、利用者から苦情も寄せられている。また、コスト削減のために空調を入れないとか、照明を間引くなど、快適なスポーツ環境とは言い難い問題も起こっている。利用者の立場にたった運営のために、直営にもどすこと。
7、子どもの権利が守られ、安心して子育てできる福岡市に
(1)保育
- 2024年10月1日時点で、未入所児童は2368人と依然として希望する保育所には入れない子どもたちが多く残されている。市長は保育の受皿確保のために企業主導型保育の導入や定員増の大規模化などを推進して保育の質を下げてきたが、定員を上回って受け入れている保育所がある一方で、保育士不足により子どもを受け入れることができないなどの理由で10人以上定員割れしている保育所もある。企業主導型保育事業の拡大や定員増の増改築を推進するのではなく、公共用地を活用して適正規模の認可保育所を増設すること。また、現在7園である公立保育所を増やし、せめて各行政区に設置すること。
- 全国で子どもが亡くなったり重体になるなどの事件が社会問題化するなか、福岡市の重大事故発生件数が10年前の2014年が5件だったのに対して2022年は31件、2023年26件と大きく増加している。そうしたなか国が保育士1人が受け持つ子どもの数を変更したことに関して現場の実態は「まだ不十分だ」との声が上がっている。配置基準のさらなる見直しと、今回見送られた0、1、2歳児の基準見直しを国に求めること。さらに市独自の配置基準を設け、0歳児は1対2、1歳児は1対4、2歳児は1対5、3歳児は1対10、4・5歳児は1対15へと改善すること。
- こども誰でも通園制度は保育の本質を根本的に変質させ、子どもが物のように預けられることになりかねない。預けられる子どもも、一緒に生活する子どもにもストレスを与え、少ない給付のため新たな人材を確保することは難しく、保育の質の低下に繋がるなど問題は山積みである。このような事業にも関わらず、国の基準の4倍、月40時間の受け入れを行おうとしている市長は、現場の実態を見ることなく、推進する政府の側に立ち、子どもに向き合っていない。しかも、国はこの制度を近いうちに、本格実施にして、市町村の関与なしに、保護者と施設の直接契約を行わせようとしているが、そうなれば市町村の関与は極めて薄くなり、保育の実施責任が民間任せとなりかねず、子どもの命や発達の保証が保たれない。このまま、こども誰でも通園制度を行うことはやめ、子どもたちが安心して保育される制度に抜本的に見直すこと。
- 昨年度、福岡市では26件の不適切保育が確認された。こうした中、先日、市内の認可外保育所で働いていた保育士からの「虐待が行われている」という市担当者への告発があり、その保育所では泣き止まない子どもを叱責したり、倉庫などに隔離するといった虐待が行われていた。虐待根絶のために通報の奨励に努めることとあわせて、保育士の負担軽減のために配置基準を市独自に見直すことと保育の専門性と質を確保するための取りくみを市の責任で行うこと。認可外であっても管理職は保育士を置くなど市独自の基準を設けること。また、昨年起こった不適切保育の81%は市の相談窓口により発覚しているため、窓口の充実や通報システムの周知を行うこと。
- 国の面積基準は75年前から変わっておらず、様々な弊害を起こしている。乳幼児特有の感染症やインフルエンザなどの発生を鑑みると、市独自の乳児室の改善にとどまらずさらに改善を図ることが求められる。0歳児、1歳児については、午睡中の死亡事故を防ぐため、数分おきに呼吸確認が求められるが、布団が重なり合うなか確認する困難さがある。2歳以上の保育では、食事もおむつ替えも遊びも同じ場所で行われ、生活である保育場所として十分な面積が確保できていない。現在の施設面積、園庭面積の基準を抜本的に改善することを国に求めるとともに、本市独自の基準を乳児室以外にも設定すること。
- 幼保無償化は対象年齢が3~5歳児完全無償、第2子以降についても無償となったが、対象年齢をすべてに広げるよう国に要請すること。さらに国が行うまでは、子育て世帯の負担軽減のために市独自ですべての子どもを対象に保育料は無償とすること。また、制服、遠足、文房具代など「隠れ保育料」と呼ばれる実費徴収費が重い負担となっている。物価高騰の影響が特に子育て世帯にのしかかる中で、これらの費用についても無料とするよう国に求め、市独自の補助制度をつくること。保育料無償化の下でそれまで保育料に含まれていた副食費が保護者の実費負担として切り離され負担となっている。第3子以降に限らず、全てに対象を広げて副食費無償化の手立てをとること。
- 保育士の賃金は、全産業平均より月5万円以上低いと言われており、現場の保育士からも「賃金に不満」「せめて月5万円あげてほしい」などと賃上げを求める強い要望が毎年寄せられている。また近年保育士不足で園の経営が苦しくなっているところが少なくなく、専門職にふさわしい賃金の保障ができるよう国に求めること。国の公定価格が引き上げられるまでは市が各種手当など独自施策をつくり手取りの底上げを図ること。補助金や、格差をつける手当ではなく、保育現場で働くすべての職員の賃金の底上げにつながる改善を行うこと。また、本市における保育士の賃金の実態調査を行うこと。
- 保育士の離職防止のために市独自の施策である家賃の一部助成や奨学金の返済支援の対象範囲と額は不十分であり、対象を保育職員全員に拡充すること。また認可外保育施設、院内保育所などにも適用すること。家賃助成額は少なくとも月3万円に引き上げるとともに、奨学金返済支援の補助も拡充し、返済が終わるまで支援すること。
- 博多区の宗教法人が運営する認可保育所が、経営難を理由に2025年3月末で閉園することが判明した。突然の転園を余儀なくされた保護者らは不安や憤りを抱えている。市は数年前より経営難の相談を受けており、今回の事態にあたり適切な支援が行われたのか検証を行うこと。また子どもたちが路頭に迷うことにならないよう、保護者の希望に沿うよう最大限支援すること。
- 深刻な保育士不足の中、高額な人材派遣料が園の経営を圧迫している。福岡市が人材を確保して、派遣できるよう制度をつくること。
- 保育の一環である給食を担う給食調理員の給与は、保育士と比べて賞与を含めて大きな差がある。ミスが許されないアレルギー食や宗教食への対応、0歳児の1人ひとりの発達に応じた離乳食づくりなどの専門性と、保育士とともに子どもたちの安全と成長を見守るチームとしての調理員の役割と責任は大きい。保育士と同等の給与水準とするよう国に求めるとともに、市独自に調理業務の特殊性と専門性に見合う「特別手当」を創設するなど格差是正のための手立てを講じること。
- 国の配置基準では調理員も到底足りておらず、基準の改善を国に求めるとともに、市独自にも配置基準を引き上げて財政措置を講じること。
- 給食調理員の書類や記録が煩雑になっている。日中は給食やおやつづくり、片付けに追われ、書類や記録の時間がサービス残業になっている。保育士と連携してすすめるためにも書類・記録の簡素化を図ること。
- 子どもの発達や食歴に合わせた、安全でおいしい給食を提供するためには、職員間での園児の情報共有が不可欠であり、本市が重要性を解く食育は、給食調理員と保育士が連携をとりながら行う必要があり、自園方式でなければ実施できない。給食は外部搬入や外部委託などの規制緩和ではなく、自園方式を堅持すること。
- 保育所の開所時間は11時間だが職員の勤務時間は8時間のため、時間差勤務が行われている。早朝や夕方などの時間帯は特に忙しく、様々なトラブルが起きやすいが、保育士の人数がそろっていない時間である。事故がないようすべての保育時間で配置基準が満たされている必要があり、朝夕の保育士を実際に増やして対応するためには現在の公定価格では不十分である。実態に見合うよう財政措置をするよう国に求めるとともに、市独自に補助制度を設け、どの時間帯でも配置基準が満たされるようにすること。
- 保育業務の負担軽減としてICT化がすすめられているが、公的に提出する必要がある記録の作成等は、労働時間内には終わらず、休憩時間や自宅に持ち帰って書くことが常態化しており、保育士の大きな負担となっている。ICT導入という小手先のやり方ではなく、抜本的な業務の削減を図るとともに、提出させる書類を精選するとともに、必要な書類作成については労働時間であることを明確にし、残業手当が支払えるよう運営費の増額を行うこと。
- 家庭的保育事業や小規模保育事業などは、保育基準が条例で定められているものの、園庭の設置義務がなく、職員全員が保育士の有資格者でなくても良いという国基準に、市は有資格者を1名義務付けてはいるが、認可保育所より基準が低いため、保育士の質の低下や保育所間での格差につながるなど問題である。すべての子どもの最善の利益と発達の権利を保障するため、条例を見直すとともに、必要な支援を強めて規制緩和路線を改めること。
- 本市の認可外保育施設は、2024年4月1日時点で308施設となっているが、職員の健診費用など助成額の合計は約1493万円、1園につきわずか5万1692円にとどまっている。コロナ禍を経て、とりわけ院内保育所では、病院と一体に市民の命を守ってきた。さらに24時間保育や一時・休日・延長保育、障害児保育など、多様な保育要求にこたえ、地域の子育て支援に貢献し、保育行政を保管する役割を果たしている認可外保育施設への職員給与・修繕費・管理への補助を創設すること。あわせて、認可化をめざしている施設への財政支援を強化し、認可化をすすめること。
- サポート保育(障害児保育)の支援区分Ⅰ~Ⅲの補助単価で、対象児童が1人でも保育士1人を雇用できるとなったが、支援が必要な子どもが複数でクラスをまたぐ場合、充分な対応ができない。保育士を1人でも多く雇用できる補助単価の増額が、現場から求められている。発達障害やグレーゾーンの子どもは年々増加しており、必要な保育士を確保できるように補助単価を抜本的に増額すること。障害の程度が重い子どもを受け入れられるように、1対1での個別対応が可能な保育所を抜本的に増やすこと。さらに医療的ケア児や障害の程度が重い子どもを受け入れる面からも看護師の配置が求められている。看護師配置を現場任せにせず、市として保育所ごとに複数配置する基準を設け、雇用費の助成を抜本的に増やすこと。
(2)医療的ケア児、療育
- 「医療的ケア児と家族の支援法」が成立し3年経つが、2024年9月現在における医療的ケア児の保育所での受入れは、未だに公立と私立あわせて16か所23人にとどまっている。すべての保育所で医療的ケア児を受け入れることができるように看護師を配置するとともに、必要な保育士を確保するための雇用費助成の予算を抜本的に増額し、医療的ケア児の受入れを増やすこと。また、たとえ看護師を配置できたとしても、不測の事態に対応するためには医療機関との連携は不可欠である。常に保育所と医療機関等とが連携できる体制を市の責任で整えること。
- 医療的ケア児を受け入れている幼稚園や保育園に看護師を派遣する幼稚園等看護師派遣事業は、幼稚園への1回あたりの看護師の派遣時間が60分、最大120分までという制度設計になっている。これでは開所時間の一部にとどまり、十分な支援とはいえず、2023年度の利用人数は幼稚園でわずか4人である。訪問看護の時間は4時間に引き上げること。保育園での医療的ケア児の受け入れは、今年度9月1日時点で16施設23人であり、保育士の加配がつかないことを理由に断られる事例もある。看護師とともに保育士を増やすこと。
- 2024年に「南部療育センター」が設置される予定であるが、発達障害児等の増加に伴い、現在の市内3か所の療育センター等における相談数は年々増加しており、単独通園施設の待機児童数も毎年発生している。相談から診断まで約1か月半かかっている。療育施設はまだまだ足りておらず、相談・診断・療育が速やかに受けられるように、療育センターや単独通園施設など療育施設をさらに増設すること。言語療法士や作業療法士などの療育は、現在は年1回しか受けられず、専門家の指導が年間通して受けられるよう、専門職員の増員を行い、療育に欠かせないきょうだい児の託児を実施すること。
- 新たな事業を実施する際には、子どもの発達と権利こそ中心に据えた制度設計が必要だが、児童発達支援センターの一時預かりについては、こども未来局が2026年度開始予定としていたものを市長がトップダウンで来年度からすべての児童発達支援センターで強引にすすめさせようとしている。すでに今年10月1日からは東部と西部の療育センターと2つの民間で強行されたが、現場からは「職員にとっても、子どもにとっても、療育後に体制の整わない中預けられることは大きな負担となる」と懸念が出ている。こういうやり方を現場の声を無視して押し付けることは許されず、体制が取れるまで強行しないこと。
- 本市は未就学児の療育について、障害の種別と年齢によって児童発達支援センターの利用頻度と利用時間を細かく定めており、センターと保育所の併用が認められないなど柔軟性に欠ける仕組みとなっている。近年、共働きで障害のある子を育てる家庭が増える中で保育所に通いながら療育を受けるというニーズは広がっているが、本市の規定では対応できず、「仕事を辞めざるを得ない」という声も複数あがっている。他都市では、幼稚園・保育所との並行通園による療育の強化も進んでいる。児童発達支援センターと保育所の併用を認めるよう規定を改善し、並行通園できる施設を増やすこと。また、保育所等訪問支援制度の周知と人員などの増員を行うこと。
(3)子どもの医療費
69%の自治体が医療費無料化する中、本市は子どもの通院時の医療費助成対象を高校生世代まで拡大したが、1医療機関につき、ひと月あたりの自己負担額500円を残した。18歳までの入院・通院ともに通院時の自己負担をゼロにし、早急に子どもの医療費は完全無料とすること。また今年8月、全国知事会も子ども医療費について「全国一律の制度の早期創設」を訴えている。国に子どもの医療費無料化を求めること。
(4)放課後児童クラブ
- 放課後児童クラブ(学童保育)の専用施設は登録人数に対して面積が狭く、人数がオーバーすれば理科室や音楽室など子どもの生活や遊びには適さない学校の特別教室を使っている。子ども1人あたり1.65㎡を確実に保障するよう計画的に整備し、各施設に、8㎡以上を確保した「静養するための機能を備えた区画」や、職員室、調理室、ホール(集会室)を備えるようにすること。また、トイレの設置基準が40人に1つと低く、多いところでは60人以上に1つのトイレしかなく、常に行列ができるところもある。安全、衛生上必要なトイレ、手洗い場を国の設置基準に沿って増設すること。
- 子どもの発達・成長を保障するためにも、支援単位については「1クラス30人以下」とすることが必要であり、今後の新たな感染症対策にとっても必要な適正規模とすること。
- 子どもの成長・発達を保障する支援員は専門職であり正規雇用を基本とすべきである。しかし、市は未だに会計年度任用職員という働き方をさせている。早急に改善し、正規職員として大幅に増員すること。専門職にふさわしい処遇改善を行うこと。
- そもそも少なすぎる支援員を補うため、協力という言葉を借りて有償ボランティアという脱法行為で約2000人の補助支援員が配置されている。労働時間に応じて報酬を受け取り、指揮命令に従って支援員を補助しながら労働者として雇用しないというやり方は許されない。補助支援員と雇用関係を結び、正規化を図ること。
- 社会福祉法人が運営する民間学童保育施設へ、発達の保障や児童の居場所を求めて入所希望は増加している。国はコロナ禍の下で民間の学童保育施設も給付対象とした。このことは民間といえ、放課後児童の育成の役割を果たしていると認めたものである。しかしその現状は、昨今の物価高騰により、経営危機に瀕しており、保護者への利用料引き上げが検討される事態も見受けられる。本市は社会福祉法人が営む民間の学童保育施設に対し、全く財政支援を行なわない差別的な対応をしている。放課後児童クラブにしか支援しない態度を改め、保護者の選択肢を広げる立場から民間にも恒久的な独自の財政支援を行うこと。
(5)児童館
地域に根ざし、専門職員が常駐する児童館は、ゼロ歳児から高校生までが自由に利用できる居場所である。本市では中央区に1つしかなく、都心部から遠いところに住む市民は利用しづらいという不利益を被っている。中央区の利用者が、他行政区に比べ5倍〜10倍多いことにも示されている。また、市内に1館の体制では、国の児童館ガイドラインが定める児童館としての拠点性や地域性は発揮できないことは明らかである。2023年度は中高生の利用も過去5年で1番高く、貴重な居場所となっている。また、乳幼児を抱える保護者にとっては交流や相談の場でもある。南区では新たに、「旧柏原公民館跡地に児童館を」という運動が始まっている。早急に児童館を全ての行政区に設置するとともに、幼稚園・学校・公民館の跡地など公有地を活用して計画的に増やすこと。
(6)児童虐待
- 本市の児童虐待の相談対応件数はこの5年間全国の倍以上のペースで増え続け、3282件(2023年度)と10年連続で過去最多を更新した。また小中学生に配布している教材用タブレット端末を使った相談対応事業により、子ども本人からの相談も急増し、その数は前年度の6.8倍になっている。全国状況よりも深刻な現状にかんがみ、2022年3月30日に定められた国の新たな「児童相談所運営指針」において管轄区域内の人口は「基本としておおむね50万人以下」であることとされたことをふまえ、児童相談所を増やすこと。児童相談所内への児童心理治療施設の設置により、児童相談所の一時保護所の定員が40から10へと減らされ、児童養護施設などに割り振っているが、そもそも一時保護を想定した施設ではないため受け入れには人員や施設の面で困難がある。不足する児童相談所の一時保護所の定員を増やし、環境整備を行うこと。
- 専門職である児童福祉司・児童心理司について、児童虐待防止対策総合体制強化プランで示された2023年度目標の職員配置基準にもとづき児童虐待相談対応件数等を勘案すると同年度の児童福祉司は93人、児童心理司は46人必要であるが、本市の児童福祉司は82人、児童心理司は42人にしかならない。全員を正規雇用にして、早急に基準を達成できるよう採用数を増やすこと。また、半数が経験年数3年未満という状況をあらためて継続性を強め、専門性を高めること。弁護士資格をもつ職員を複数名配置すること。
- 児童養護施設等を退所した若者が社会生活を営んでいくうえで課題となっていることや不安に思っていることについて具体的に把握するために、市としてアンケート調査などにとりくみ、進学・就労支援などを強化すること。また施設職員について現行の本市の制度である、産休代替雇用や共済掛金への助成だけでは職員確保にはとうてい及ばず、処遇改善のための本市独自の支援をさらに拡充するとともに、国に対しても措置単価の引上げを要求すること。
(7)ひとり親家庭
日本のひとり親家庭の貧困率は44.5%とOECD36か国平均の31.1%を大幅に上回っている。特に母子世帯は、育児もありフルで働けず、就労していても非課税世帯が多く、物価高騰のもとでより大きな経済的打撃を受けて生活状況が非常に厳しい状況である。また、子どもの年齢が上がるほど教育費も上がり食費などを削って何とか生活しているのが実態である。すべてのひとり親家庭が「健康で文化的な最低限度の生活」ができる「福岡支援モデル」を策定するよう、以下の支援を求める。
- 「福岡市ひとり親家庭実態調査結果」(2021年度)において、「行政機関に対する要望」のトップは「年金・手当などの充実」であり、回答数の6割という強い要望になっている。児童扶養手当について、所得制限の緩和による第1子の拡充、第2・3子以降への加算額の大幅引上げ、毎月支給化、18歳から20歳未満までの支給延長を国に求めるとともに、市独自に加算すること。また、児童扶養手当の支給が開始から5~7年後に半減になる一部支給停止措置はやめること。
- 前掲調査で2番目に回答数の多い項目は「医療保障を充実する」である。ひとり親家庭等医療費助成制度の所得制限をやめ、18歳まで完全に無料にすること。
- 前掲調査で3番目に回答数の多い項目は、「県営住宅や市営住宅を増やす」である。福岡市のひとり親家庭で公営住宅に入居できているのは1割にも満たず、半分は民間借家やアパートなどで生活している。市営住宅におけるひとり親世帯への収入基準緩和・抽選倍率優遇や子育て世帯一般の別枠募集では十分ではなく、市営住宅そのものを大幅に増やすこととあわせて、ひとり親家庭が入居できる枠を抜本的に増やすとともに、ひとり親家庭への独自の家賃補助を行うこと。
8、あらゆる分野でジェンダー平等をすすめる
(1)市職員における男女賃金格差是正
2023年度の市職員の平均給与は女性が男性の84%となっており、年収で約105万円、40年働けば生涯賃金で約4200万円もの差となっている。市職員における男女賃金格差の是正をはかること。また、2024年5月現在の市職員の管理職に占める女性の割合は市全体で20.1%でありきわめて低い。計画的に女性管理職を増やす手立てをとり、意思決定の場における「男女半々」の実現をめざすこと。
(2)女性が多数を占める会計年度任用職員等の待遇改善
本市の会計年度任用職員のうち約8割は女性であり、全体の約8割が年収300万円以下となっている。このような働かせ方が女性の低賃金を生み出す要因となっており、公務職場で非正規を増やすことは市が率先して男女賃金格差を広げることであり、許されるものではない。ジェンダー格差をなくしていくためにも、会計年度任用職員をはじめとする非正規職員の待遇改善をはかること。
(3)市内民間事業所の男女賃金格差是正
ジェンダー不平等の大きな要因となっている男女間の賃金格差の解消に向け、市として市内事業所に対し、男女別の賃金を調査・公表して、その是正計画策定を義務付ける条例をつくること。
(4)選択的夫婦別姓
選択的夫婦別姓について、世界で夫婦同姓を法律で義務づけている国は日本だけであり、国連の女性差別撤廃委員会も、日本政府に対して繰り返し、法律で夫婦同姓を義務付けることは女性差別であり、ただちに改正すべきだと勧告している。日本国内でも、自民党以外の主要政党がすべて推進の立場にたち、様々な世論調査で7割前後が賛成となり、日本経済団体連合会が制度の導入を求めて政府に提言を出すなど、選択的夫婦別姓実現の方向へと世論が大きく変化している。民法を改正し、選択的夫婦別姓を法制化するよう国に求めること。
(5)同性婚・LGBT
- 2024年8月現在、同性婚を認める国・地域は約37にのぼっており、今後もさらに増える見込みとなっている。日本でも「同性カップルが結婚(法律婚)できないのは憲法違反だ」とする裁判が各地で起き、地裁に続いて札幌高裁と東京高裁でも同性婚を認めない現行の民法などの規定を「違憲」と判断した。本市議会においても「同性婚の法制化の議論を求める意見書」が採択されている。同性婚を認める民法改正を国に求めること。
- 昨年成立したLGBT理解増進法は「多数者が認める範囲」でしか性的少数者の人権・尊厳は認められないとのメッセージを含む内容になっており、逆に理解を阻害し、差別を助長しかねない。性的少数者への差別・偏見を拡大することのないよう、性的指向・性自認等を理由とした差別を禁じ、多様性を尊重する立場を市長が明確にするとともに、LGBT差別禁止条例をつくること。
(6)パートナーシップ制度
本市のパートナーシップ宣誓制度は、対象を一方又は双方が性的マイノリティの場合のみと限定しているため、受領証提示の際に意図せぬカミングアウトにつながる恐れがある。性的マイノリティではない異性間の事実婚も対象とすること。また、全ての民間事業者に是正勧告ができるパートナーシップ条例を制定すること。
(7)中高年シングル女性への支援
離婚、死別、非婚、未婚の母、別居により配偶者やパートナーと同居しておらず、親や子ども、兄弟姉妹などの同居人がいない中高年シングル女性は、社会的、経済的に脆弱であり、生活保護の一歩手前で困窮している世帯も少なくない。多くの悩みがあっても相談できる場がないことも多いため、公的相談機関に中高年シングル女性の相談カテゴリを創設し、周知すること。
(8)市職員の生理休暇
2023年度に一度でも生理休暇を取得した市職員の割合は3.9%と非常に少ない。生理休暇を取得しやすい職場環境の醸成をはかること。
(9)生理の貧困
物価高騰が続くなかで、「生理の貧困」対策は女性の健康や尊厳に関わる重要な課題として、生理用品を学校トイレに常設することが13の政令市を含む多くの自治体に広がっている。本市において、南市民センターや博多区役所では民間企業と提携した生理用品の無料提供サービスをおこなっているが、公共施設においてはほぼ設置されておらず、学校トイレにも設置されていない。すべての学校トイレと市民センターや公民館、地下鉄の駅など公的施設に生理用品を設置すること。
(10)DV
昨年、全国の警察が受理したDVの相談件数がDV防止法施行以来最多となった。相談内容も多様化・複合化し、高度な専門性と継続性をもった相談・支援体制が求められており、DVの相談員について無期雇用の常勤職員、原則異動のない専門職にすること。各区の子育て支援課やアミカスに保育士や学習援助者を配置し、子連れの相談者が相談しやすい体制をつくること。民間シェルターへの補助金など支援の拡充、中長期滞在できる中間的施設(ステップハウス)の開設・運営へ助成するとともに、自立に要する費用の補助を拡充すること。男性DV被害者が相談しやすい体制の強化をはかること。また、国に対して退去命令の対象に精神的暴力を含むことや緊急保護命令の導入などDV防止法をさらに改正するよう求めること。
(11)ハラスメント
ハラスメントは女性をはじめとする労働者の人権と働く権利を傷つける重大な行為であり、働き続けることを阻害する大きな要因の一つになっている。国に対し、ILO条約を批准できる水準のハラスメントの禁止を明確にした法整備を行うよう求めること。本市としてハラスメントが違法であることを明確にした「ハラスメント禁止条例」を制定すること。部局によっては市職員のハラスメントの相談・調査・判断を同じ部署で行うことがあることは問題であり、啓発・苦情処理・紛争解決のできる専門の窓口を設置すること。
(12)性暴力・痴漢
- 女性や子どもにとって、最も身近な性暴力である痴漢や盗撮について、市内の被害件数さえ把握していないのは問題であり、市独自の実態調査や相談・支援センターの増設、加害根絶のための啓発や加害者更生などの対策を講じ、政治の責任で痴漢を根絶すること。
- 「性暴力被害者支援センター・ふくおか」においてはSNSを使って気軽に相談ができる体制や、被害者の精神科受診の公費負担の拡充など抜本的に充実するとともに、本市独自のワンストップ支援センターや病院拠点型のセンター創設および警察を通さなくても病院で証拠保全ができる体制をつくること。
- 性暴力規定を見直し、性的同意年齢の引き下げや「不同意性交等罪」を創設した改正刑法が施行された。引き続き、すべての性暴力被害者を救済し、新たな被害者を生まないために、積極的な同意がなければ性犯罪とする「イエス・ミーンズ・イエス」規定創設や公訴時効の撤廃・延長などさらなる改正を検討するよう国に求めること。
(13)緊急避妊薬
どんな避妊法でも完全ではなく、性暴力被害を受けた時に特に有効であることから、緊急避妊薬が必要とされている。性交後72時間以内に服用すれば約8割の妊娠を防ぎ、内服が早ければ早いほど避妊効果が高いとされている。G7のうち日本以外の全ての国では医師の処方箋なしに購入でき、世界保健機関(WHO)も推進している。しかし、日本では医師の処方箋が必要とされ、保険も適用されないため、価格も高額である。子どもを産む・産まない、いつ何人産むかを女性が自分で決めるリプロダクティブ・ヘルス&ライツ(性と生殖に関する健康と権利)の観点から、緊急避妊薬を安心して入手しやすくする手立てを講じるよう国に求めること。
(14)離婚後共同親権
今年多くの反対と危惧の声を押し切って導入された「離婚後共同親権」は、父母間の合意がない「共同親権」を家庭裁判所が強制すれば、適切な親権の行使ができず、子の利益を害する重大な危険がある。DV被害者を含め、不本意な「共同親権」が強制され子どもの利益が害されることがないよう民法改正を国に求めること。
9、憲法の平和・民主主義の理念を福岡市のすみずみに
(1)市長の政治倫理
- 自民党主要派閥の政治資金パーティーをつうじた裏金事件が大問題となっており、今年10月の総選挙においては自民党の議席を大きく減らすなど国民の怒りの焦点となった。その結果、企業・団体献金および政治資金パーティーの禁止が国政の大きな課題に浮上しているにもかかわらず、未だに高島市長は政治資金パーティーを開催している。市長の2023年政治資金報告内容によれば、政治資金パーティーで3508万円の売上、約2650万円の収益を上げており、利益率約76%にも及ぶパーティー券の購入は対価的意義の乏しい事実上の寄附である。市長は、法に則り適切に対応しているというが、そもそもパーティー券は「20万円を超える」場合しか公開が義務付けられておらず、財界関係者や市の受注業者がパーティー券を複数の社員名義で分散して購入するといった手法で大量に購入している可能性は否定できない。市長の政治資金パーティーはやめるとともに、これまで市長が販売した政治資金パーティー券の販売先をすべて公開し、高額の支出となっている組織活動費などの内訳を明らかにすること。
- 市政における最高責任者である髙島市長の日程についてホームページで公表しているというが、詳細については市長室も把握することなく、事実上どこで何をしているのかわからない状況となっている。このような状況は異常であり、市長の日程を公開すること。また、登退庁盤については、「防犯上の理由」などとして表示しないというのは理由にならず、表示すること。
(2)統一協会問題
統一協会と政治との癒着が大問題になっている。統一協会とその関連団体が「霊感商法」や多額の献金の強要、集団結婚などで多数の被害者を出してきた反社会的なカルト集団であることは明瞭であり、市として統一協会とその関連団体について反社会的集団であると規定すること。また、市は統一協会とその関連団体の公共施設の使用について許可を保留しているが、今後も使用を認めず、表彰や名義後援なども行わないこと。
(3)住民参加
- 現場の不安の声をよそに児童発達支援センターの一時預かりをゴリ押しするなど、市長が独断専行で物事をすすめるやり方に、市民や議会から大きな批判の声が出されている。また、著名人や実業家などとの対談企画は旺盛に行う一方、さまざまな住民団体や要求団体との直接の対話は拒否するという市長の姿勢は許されない。さらには市民が市との意見交換の機会を求めた際に、「働き方改革」を理由に平日の勤務時間内に限定することは、労働者等を排除することになり、問題である。市民との直接の意見交換の機会については最大限保障するとともに、市政のすすめ方について市議会と市民の意見をよく聞き、住民投票・住民意向調査・住民討論会などを活用して、住民参画の上での政策決定を基本とすること。
- 2023年度、本市が実施したパブリックコメントは6事案であるが、意見提出件数は多いものでも58件、中には0件という事案もあり、市民の意見を広く聴取できていないのが実態である。パブリックコメントの周知方法や期間の延長などすすめ方を改善すること。また、市の施策への反対意見についても検討するなど少数意見を排除しないこと。あわせて、多様な市民の意見を市政に反映させるために、説明会や懇談会など行政が出かけて行き意見を聞くこと。また、各種審議会など委員の市民公募枠を新設・拡大すること。
- 市有地や公共用地の活用などにおける民間サウンディングは、大企業に好き勝手に意見を出させ、事業者の公募中はその情報を一切公開しないまま結論だけを市民や議会に押しつけるものであり、民主主義にもとる手法である。このような住民の声を聞かない手法はやめること。
(4)「行革」・民間参入・業務委託
- 2025年度に決定される本市の「財政運営プラン」(素案)は、「事業の選択と集中を図る」としながら、「天神ビッグバン」、「博多コネクティッド」やウォーターフロント再整備構想などの大型開発については指一本も触れず、一方、「個人給付施策の最適化」や「受益者負担の適正化」として、市民サービスを切り捨て、利用者負担を増やそうとしている。これは、地方自治体の役割である「住民の福祉の増進を図る」責務を放棄するものであり、抜本的に見直すこと。
- 2025年度に決定される本市の「政策推進プラン」(素案)は、「生活の質の向上と都市の成長の好循環を持続的なものにしていく」として、これまでのプランの基本点はなにも変えない計画を策定しようとしている。貧困をなくし、社会保障を充実させ、子どもの人格を尊重し、ジェンダー平等を追求し、地域循環型経済を成長発展させる計画になるよう全面的に改定すること。
- 本市では、物価高騰支援や給付金業務などを、大手派遣会社などの大企業に随意契約で業務委託した。本来ならば臨時に職員を増やしてでも対応すべきであった市役所業務を民間営利企業へ大規模業務委託したことにより、労働者に払われるべき賃金がピンハネされ、大企業の儲けづくりに利用されたものであり、「効果的、効率的な行政運営」とは程遠い事態となった。このような民間営利企業への大規模業務委託はやめ、労働者の適切な賃金や待遇を保障する市の直接雇用に切り替えていくこと。本市が業務委託した会社が他都市で人員配置を契約通りにおこなわず、委託金の返還に追い込まれている事例が相次いでおり、本市においても不正がないか調査すること。
- 本市でのPFI事業は、各給食センター、小中学校の空調システム、総合体育館、美術館、科学館、マリンメッセ、早良南交流センター、拠点文化施設、今宿野外活動センター、博物館、環境局西部工場などで実施されてきており、今後も市営住宅、学校校舎、下水道事業、水道事業、公園などでの検討をしていくことにしている。この事業は、施設の建設や所有を営利企業に任せるもので、担当する民間事業者に長期間にわたる莫大な利益をもたらす一方、「タラソ福岡」のような事業者の経営破綻や、利益確保のための経費節減による利用者への冷遇、公共施設の管理・運営を長年にわたって民間事業者のノウハウ任せとなり市民や議会への情報開示ができないなど、「事業コスト削減、質の高い公共サービス提供」の謳い文句とは程遠い。また、これまで公務として公共サービスを担ってきた労働者は経費削減のために非正規労働者に置き換えられ、さらに安価な下請事業者に交代させられる例も出てきている。PFI事業はやめること。
- 西部運動公園の指定管理者が、自衛隊を広報するイベントを企画し、周辺住民に案内するなど、公的施設の有り様が疑われる事例が散見される。市民の生活や福祉の向上を目的とした公共施設のあり方を厳格に守ること。
- 指定管理者制度によって本市では351の公的施設の管理運営が民間に任されている。民間管理で多様化する住民ニーズに対応し、経費の削減、住民サービス向上が期待できるとしてきたが、人件費などの労働条件さえも市が把握できず、市民サービスの低下につながる不適切な管理・運営、行政の責任放棄も顕著となっている。営利企業参入を抜本的に見直して、原則直営に戻すこと。あわせて、制度が導入されている施設にはモニタリングの基準を強化するとともに、抜き打ち点検や専門家による現場点検、現場労働者から直接、聞き取り調査をおこなうこと。
- 株式会社クリーンエナジーの操業に伴う、九州電力への配当金は15億9250万円にもなっており、市財政を食い物にしている同社を廃止し、直営に戻すこと。また、市政を財界いいなりに誘導する役割を果たしている、「福岡アジア都市研究所」は廃止すること。
(5)市職員の配置・労働条件
- 本市の会計年度任用職員は、2024年5月時点で6181人となっており、その処遇は78.8%が年収300万円未満と劣悪となっている。また1年契約で、本市での更新は4回まであり、来年以降毎年3月に大量雇い止めが問題となる。この様な労働条件では、専門職として市民に信頼されていても不安定な雇用となっており、展望が持てない。人事院は6月、国の非正規公務員の更新を原則2回までとする制限の撤廃を各府省に通知した。本市も更新回数の上限を撤廃するとともに、正規職員として採用し、臨時・非常勤職員などの非正規労働者はただちに時給1500円以上にすること。
- 本市の人口1万人当たりの職員定数は政令市で2番目に少ない110人で、災害や、感染症などの事態では、本来の業務の遂行を止めなければならない状況も生まれるなど、住民の福祉の向上という行政の役割を果たせていない。また、2023年度の超過勤務は、法定時間外労働の上限である「年360時間以内」を超えている職員が644人、「月45時間以内」を超えている職員が3005人となっており、長時間・過密労働が、過労死をうみだしかねない状況をつくっている。職員定数を抜本的に増やすこと。
- 2024年人事委員会勧告に基づいて、市職員の月例給は10400円、ボーナスは0.10月分、平均年間給与は21万3千円引き上げられた。しかしながら、20年前と比較すると年間で平均55万円近く引き下げられており、公務員としてのモチベーションを低下させ、生活設計や地域の景気にも深刻な影響を与えている。市職員給与の大幅引き上げを行なうこと。
- 市は職員をまともに増やすことなく、「最少の経費で最大の効果」と称して、窓口業務をはじめ多方面において民間委託している。公務職場の民間委託化によって、職員が継続的に従事することで蓄積される公務に必要な専門性やノウハウ、経験が失われている。また、住民からの苦情や発生した問題が、市政運営に反映されず、信頼を損なっている。よって、これ以上の民間委託化はやめ、正規職員を基本とすること。
(6)市有地
財政運営プランでは、「民間事業者のノウハウも活用しながら」「市有財産の有効活用に取り組(む)」としている。そもそも市有地は市民の財産であり、営利企業のもうけのために売却や貸付をすることは許されないが、実際には、各地の事業所や市有施設跡地の売却、北別館や大名小学校跡地などのような長期賃貸方式での貸付が行われている。民間営利企業への売却、貸付方針はあらため、不足している保育所や特別養護老人ホームなど、市民の生活を守るために活用すること。
(7)名義後援
- 市は2015年以降、「平和のための戦争展」の名義後援を拒否し続け、2023年度は当初承諾したものの、終了後に「特定の主義主張に立脚した内容が含まれ、行政の中立性を損なう」という理由で取り消した。しかし、そもそも市民の自発的な取り組み自体を応援するのが名義後援であり、展示されている作品一つ一つの中身を行政がチェックするようなことは、思想信条の自由を掲げた憲法に違反する重大な越権行為である。このような偏狭な取り扱いのもとになっている「名義後援の承認に関する取扱い要領」を抜本的に見直し、関係団体に謝罪すること。
- 東市民センターの「ひまわり広場・会議室」は、市民に広く貸し出されているスペースであり、事実上「公の施設」として扱われている。しかしながら、市民団体などが利用する際には名義後援がなければ認めないとしており、これは「住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはならない」とする地方自治法第244条の精神に反するものであり、運用を改めること。
(8)消費者
- スマートフォンやインターネットを使った消費者被害が広がっている。特に未成年者契約の取消権がなくなったことで若年層の多重債務や消費者被害が懸念されており、中学校・高等学校等での体系的な消費者教育を強めること。特に若者などに多額の借金を背負わせる「オンラインカジノ」が社会問題となっており、啓発活動をつよめること。そのうえで、消費生活センターの公式SNSを立ち上げ、SNSを活用した啓発や相談に取り組むこと。
- 本市の消費生活センターの相談業務は2024年度より市直営に戻ったが、相談員は会計年度任用職員である。複雑化・多様化する相談に対応できるよう相談員の体制を強化するとともに、専門職にふさわしく正規職員にすること。
(9)デジタル化・マイナンバー
- 市はデジタル社会に必要なツールだとして国とともにマイナンバーカードの普及を推進し、コンビニでの証明書等の発行手数料に差をつけるなどの平等原則に反する行為を行っている。しかし、マイナンバーカードをめぐって、別人の情報が閲覧できる、公金受取口座に本人ではない口座が登録されるといった重大なトラブルが次々と発覚するなかで、多くの市民が不安に感じており、このまま無批判に推進することは許されない。マイナンバーカードの普及推進はやめ、国に事業の見直しを求めること。
- 本市がすすめている行政手続きの急速なデジタル化は、対面での窓口サービスや紙による手続きの縮小・廃止が懸念され、デジタル機器を所持していない人や使いこなせない人が行政手続きから排除されるおそれがある。一方でデジタルを使いこなせない人への市の支援はあまりにも貧弱である。デジタルデバイド対策をさらに強めると同時に、市民の多様なニーズに応えるために、デジタル手続きとともに、紙による手続きを含めた対面での窓口サービスの拡充をはかること。
- デジタル関連法は、国や自治体がもつ膨大な個人情報のデータを企業に開放し、利活用しやすくすることが大きな目的となっており、市民のプライバシー権の侵害、利益誘導・官民癒着の拡大につながるものである。「地域の特性等に照らし、地方公共団体は法律の範囲内で条例により必要最小限の独自の保護措置を講じることは当然可能である」とする国の答弁をふまえ、本人の知らないうちに個人情報が利活用されることがないよう、個人情報の自己コントロール権を保障するための市独自の措置を講じること。
(10)人権教育・同和
「福岡市人権教育・啓発基本計画」は、実質同和問題や差別の問題に偏重している。しかし今、ジェンダー平等、子どもの権利、労働者の権利、外国人の権利など、日本社会のあらゆる分野で「人権後進国」の矛盾が噴き出しており、社会の不公平の拡大と分断を招いている。憲法で保障された幅広い人権を取り扱うものに「計画」を改善し、学校をはじめ社会教育活動の中での人権教育の見直しをすること。また、行政の主導による市民と企業への「人権啓発」名目での「同和」研修の押しつけはしないこと。あわせて、「同和」の特別対策に類するものの復活や、人権侵害を生み出しかねない特別な教育啓発や実態調査を実施しないこと。
(11)ヘイトスピーチ・外国人
- 人種や民族差別をあおるヘイトスピーチを放置することは許されない。ヘイトスピーチについて、現状把握し、差別解消に向けた計画策定を行うこと。また、市長が毅然として根絶宣言を行うとともに、その立場に立った条例を制定すること。
- 福岡市の外国人居住者は2024年9月末で4万9594人となっている。在留外国人が容易に相談窓口にアクセスできるよう公共施設・駅・商店街・スーパーマーケット・コンビニに協力依頼し、多言語でのポスターなどで周知し、外国人コミュニティなどのキーパーソンと連携して相談窓口の周知徹底を図るとともに、市独自の専用相談窓口を各区役所に設置すること。また、福岡市外国人総合相談支援センターでの相談は、主として平日昼に開催されており、土日や夜間の相談日も設置すること。外国人居住者の人権保障をすすめていくために、市として総合的な多文化共生推進計画をつくること。さらに、外国語が母語の子どもへのサポートを強め、ベトナムやネパール出身者による母国語教室の運営への支援を強めること。
- 日本には117万人の永住外国人が生活している。地方自治体の運営は、本来、すべての住民の参加によってすすめられるのが、憲法のさだめる地方自治の根本精神である。永住外国人を地方自治体の担い手としてむかえ、日本人市民と等しく参加する政治を実現することは現状に即しており、民主主義の成熟と発展につながることとなる。永住外国人の地方参政権を保障するよう国に求めること。
(12)地域コミュニティ
「共創による地域コミュニティ活性化条例」が制定されたが、加入率の低下と担い手不足問題の解決には程遠く、ましてや従前どおりに地域課題を町内会・自治会、校区自治協議会などに担わせるために条例をちらつかせるのは問題である。市が調査した令和4年度の「自治会・町内会アンケート」でも、人材不足を解決する方法として「負担の少ない活動を工夫する」との回答が過半数を超える町内会から出されている。そもそも、自治会や町内会は任意組織であるにもかかわらず、住民が町内会への加入を現場で押しつけられたり、清掃に出てこないために罰金を払わせるような運営も見られるなど、町内会の活動や運営を縛ったりするものになっているところに矛盾がある。その上、防災や福祉について公的責任の明記がないままに、民生委員の推薦や、災害時に援護が必要な人の避難計画の作成など、本来市の責任である事業が事実上町内会に丸投げされている。町内会の行政下請化を強化しかねない条例を撤回し、町内会や市民の自主的活動を真に応援すること。
(13)投票促進・若者の政治参加
- 投票区について、距離や地形など総合的に判断して分割し、投票所を抜本的に増やすとともに、すべての投票所のバリアフリー化をさらにすすめること。また、在宅投票制度、郵便投票、学生に対する不在者投票、在外投票、洋上投票など、制度を周知徹底し、投票機会の保障をはかることとあわせ、対象が狭く、手続きに手間と時間がかかる郵便投票制度の条件を緩和するよう国に求めること。
- 期日前投票は導入以降、投票所の増設なども行われ、国政・地方選挙問わず定着が進んできた。選挙実施のたびに利用割合が増加し、国政選挙では40%程度まで上昇している。商業施設等への期日前投票所設置だけにとどまらず、さらに投票率を高めるために、市内各地に「共通投票所の設置」「大学や高等学校、商業施設等への期日前投票所の設置」をすること。また、期日前投票所として使用している市役所1階ならびに区役所および商業施設等を投票日当日の「共通投票所」として利用できるようにすること。さらに、病院や高齢者福祉施設への入院患者、入所者が施設内において不在者投票ができるよう、未指定施設等への働きかけを強めること。そのうえで、外出が困難な有権者の投票行動を保障するために、選挙管理委員会が立会人と一緒に、投票箱を持って車でまわり、施設や自宅など要望がある場所に行く「巡回投票」を行うこと。
- 選挙公報は有権者に候補者情報を届ける重要な公的媒体であるが、全市的に配布日が投票日直前だとの苦情も多い。それにもかかわらず、まともな手立てがとられていないのは問題であり、少なくとも投票日の1週間前に有権者に届くよう手立てをとること。また、不在者投票の指定施設ではない、病院や高齢者施設にも、選挙公報を配布するようにすること。
- 2016年より18歳以上の若者も投票と選挙運動ができるようになったにも関わらず、政府は高校生だけ政治活動を禁止・制限する通知をだしており、政治活動の自由を侵害している。高校生にも政治活動の自由があることを明確にし、「通知」を撤回するよう国に求めること。また、若い世代の投票率向上のためにも市として中高校生向けの主権者教育を抜本的に強めること。
(14)平和、基地
- 今年4月、国は自衛隊や海上保安庁が平時の訓練活用として、岸壁や航路の整備などの既存事業の促進をはかる「特定利用港湾」に博多港を選定し、本市はこれを受け入れた。この動きはいわゆる「安全保障3文書」にもとづくアメリカいいなりの「戦争国家づくり」の一環であり、米軍が博多港を軍事利用する可能性も否定できない。もし米軍が先制攻撃による不法な戦争を開始した場合、自衛隊が集団的自衛権を発動して参戦する可能性があり、「平時」から自衛隊の訓練拠点として博多港を提供するとなれば、本市がその報復などに巻き込まれ、市民の生命・財産が危険にさらされる恐れがある。選定を撤回するよう国に強く求めること。
- 国は「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」(以下「土地利用規制法」)にもとづく「注視区域」として福岡空港・米軍板付基地から1km以内の地域など数か所を指定した。土地利用規制法上の「注視区域」は住民の個人情報などを国に提供することが求められ、「機能阻害行為」と政府に判断された場合には土地・建物の利用中止が勧告されることもあり、その結果、土地価格の低下などを引き起こすこともありうる。住民の基本的人権を守るために土地利用規制法にもとづく区域指定に抗議し撤回するよう国に強く求めること。あわせて今後、市が所有する保護すべき個人情報を国に提供しないこと。
- 高島市長は、2020年からの5年間で、市民の反対を押し切って自衛隊に対して、本人の同意もなく、多数の当事者が知らないうちに延べ15万人近い若者の名簿提供を強行し、青年をはじめ市民の中に怒りが広がっている。このことは、憲法の保障するプライバシー権や自己情報コントロール権を侵害するものであり、断じて許されない。また、自衛隊は憲法が禁じる集団的自衛権の行使を容認され、海外で「殺し殺される関係」に投げ込まれる危険があり、本市の青年をそのような場に送り出すことは認められず、自衛隊への対象名簿の提供をやめること。
- 福岡空港内にある米軍板付基地で1972年に返還された米軍基地の跡地に残存していた燃料輸送管(パイプライン)に沿ってベンゼンなどの土壌汚染が確認され、福岡市が汚染土の除去費用を約2億200万円支払っているが、これを市が負担することは異常であり、米軍基地の原状回復費の返還を求めること。また、有害物質であるポリ塩化ビフェニール(PCB)の廃棄物が米軍基地内に保管されている疑いが報道されている。事実を確認し一刻も早い撤去を要求すること。さらには、今年10月の日米共同統合実働演習での福岡空港使用など、市民の命と安全を脅かすような動きは到底許されず、これらの問題の根源となっている米軍板付基地の即時全面返還を強く求め、福岡空港の軍事利用は中止するよう国と米国に対して強く要求すること。
- 今年11月に福岡空港に飛来したオスプレイは墜落事故を繰り返している欠陥機であり、市民の命と安全を脅かすものである。今回のオスプレイ飛来について米軍と国に抗議し、日本国内での飛行中止と撤去を働きかけること。また、今後オスプレイ飛来のような重要な情報について米軍や国から得た場合にはすみやかに市民や議会に知らせること。
- 博多港への米艦船の入港は友好親善などの目的であっても許されるものではなく、福岡市の「平和都市宣言に関する決議」にも「博多港港湾施設管理条例」にも反している。米軍艦及び自衛隊艦船の入港を拒否するとともに、「非核神戸方式」を導入すること。
- 今年、日本原水爆被害者団体協議会がノーベル平和賞を受賞したことに象徴されるように、今や核兵器廃絶は世界の流れとなっている。史上初めて核兵器を違法と断じた核兵器禁止条約は、9月24日現在73か国が批准し、署名した国は94か国に達し、国連加盟国の過半数の97に迫ろうとしており、福岡市議会でも速やかな核兵器禁止条約の締結を国に求める意見書を決議している。平和首長会議に加盟する市長として、市長自ら首相に対して同条約の批准を強力に働きかけること。また、市長の就任以来、核兵器廃絶や非核三原則の遵守などをうたう「非核平和都市宣言」を求める議会請願が、被爆者団体や高校生など幅広い市民から、13年間に8回も出されているが、市長は「アジア太平洋都市宣言」や議会議決を持ち出し、理由にならない理由で、頑なに拒否する異常な態度を続けている。高齢となっている被爆者の願いを無視することは許されず、ただちに宣言すること。
- 国連の軍縮大使や各国政府代表などが参加している原水爆禁止世界大会や、広島・長崎市の原爆資料館に、高校生をはじめ若者や親子を派遣するなどの事業について、北九州市等を見習って予算化すること。また、市として、原爆資料展をおこなうこと。
- 福岡は広島、長崎に次いで被爆者が多く、また日本最大の引揚げ港を持ち、犠牲者1000人を超える大空襲を受けている。現在、戦争の史実を学ぶ公的な場は、市民福祉プラザの一角にある「引揚港・博多」常設展示施設や、空襲で大きな被害が出た地区にある博多小の平和祈念室などに限られている。冷泉小学校跡地など公共用地を活用して常設の平和資料館を設置すること。
- 福岡市市民福祉プラザ1階に「引揚港・博多」関係資料が常設展示されているが、一昨年リニューアルオープンして以来まだ一度も展示が入れ替えられていない。定期的に入替えを行うことは当初からの約束であり、毎年入替えを行うこと。また、資料について説明する学芸員も配置し、博多港引揚げの史実を学校教育の課題に位置付け、子どもたちに戦争の悲惨さと平和の大切さを教える教材として使うこと。引揚げ記念碑「那の津往還」は記念樹とともに、ウォーターフロントの再整備の中で移転することなく、維持すること。
- ロシアによるウクライナ侵略は開始から2年半以上が経過し、戦争の終わりが見えない状態が続いている。また、イスラエルの大規模攻撃によって、パレスチナ・ガザ地区の人道状況は、きわめて深刻な危機に直面しており、国連の特別委員会は「ジェノサイド(集団殺害)の特徴と一致する」と結論づけている。それにも関わらず日本政府は米国の顔色をうかがい、ロシアの侵略を非難する一方で、イスラエルの国際法違反の蛮行について批判しないという態度を取っている。ロシア軍のウクライナからの即時・全面撤退を強く求め、イスラエルの国際法違反の蛮行については強く中止を求めるとともに、国連憲章と国際法を守るという一点での協力を世界各国に呼びかけるよう国に要請すること。
(15)改憲と戦争できる国づくり
石破首相は戦力の不保持と交戦権の否認を明記した憲法9条2項を廃止することを年来の主張としており、従来の改憲派でさえ主張してこなかった軍事路線の強化に踏み出し、日本の戦後の平和主義を根底から覆す懸念がある。今後5年間で43兆円もの軍事費をつぎ込む大軍拡に突き進み、暮らしも平和も壊そうとしている。この大軍拡の本質は、米国が推進する対中国軍事包囲網づくりの最前線に日本が立つということであり、「先制攻撃」を基本原則にすえる米軍の「統合防空ミサイル防衛」戦略に組み込まれることに他ならない。集団的自衛権の行使により自衛隊が米軍と融合して相手国に攻め込んだ結果、膨大な報復攻撃を呼び込み、本市も含めた日本全土に戦火が及ぶことになる重大な問題である。憲法第9条の改定はこうした米国の海外での戦争への全面参加を意味するものであり、改定をやめるよう国に求めること。
以上