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日本共産党福岡市議団の政策と活動

2012年10月

「福岡市総合計画」原案の市民意見募集にあたって

日本共産党福岡市議団

福岡市総合計画審議会は、25年後を目指す総合計画の原案を策定し、市民意見を募集しています。年内に成案をとりまとめて市長に答申し、市は来年の予算議会に議案を提出、決定しようとしています。

総合計画とは、25年間の市政運営の基本を定めた「基本構想」と、10年間の方向性を示した「基本計画」、4年間の「実施計画」からなっています。審議会での検討をふまえ、25年ぶりに改定する基本構想と第9次基本計画の原案が出されましたが、これは歴代市長が推進してきた現行の基本構想・基本計画の失敗に何の反省もないまま、その路線を引き継ぐとともに、高島市長の独特の考えを色濃く反映したものとなっています。

「基本構想」について ~破たん済みの「アジアの拠点都市」にしがみつく

基本構想では25年後にめざす「都市像」が示されていますが、全体として抽象的な言葉ばかりで何が言いたいのかわかりにくいものです。その中で見過ごせないのは、4の「アジアの拠点都市」です。

これは桑原市長以来、人工島事業や九大学研都市構想、新空港構想など無謀な大型プロジェクトを推進するためのスローガンとして長年使い古されたものです。福岡市が政令市で2番目に深刻な借金財政に陥り、市民生活を圧迫している最大の元凶です。「アジアの拠点都市」路線の破たんを認め、きっぱり手を切ることこそ求められているのです。にもかかわらず、この路線にしがみつくということは、破たんを承知で無駄な大型開発に突き進むという高島市長の意思表示に他なりません。人工島にはこども病院、青果市場に続き大規模体育館も移転させようとしています。港湾地区を大規模に再編整備する「博多港長期構想」の具体化に着手しており、天神・博多駅地区からウオーターフロント地区までの「新・福岡都心構想」もあります。こうした巨大プロジェクトに一体いくらかかるのか、財源が何も示されていないのは大問題です。「日本を牽引していく都市」「アジアの諸地域のモデルとなる都市」などの言葉がならんでいますが、あまりにも身の程知らずと言わなければなりません。現実には福岡市は日本の一地方都市に過ぎず、アジアの大都市(例えば北京、上海、ソウル、香港、シンガポールなど)とは人口規模も政治的社会的役割も比較になりません。市長の勝手な夢を市民に押し付けるのはごめんです。

一方で、市民に対し「自律」を要求しているのも特徴です。都市像の1には「自律した市民が支えあう」「市民生活が豊かであるためには、まず市民一人ひとりが自らを律し」とありますが、地方自治体が市民に対し「自律せよ」と言うのには違和感があります。「行政に頼るな」「要求するな」というのは地方自治体の基本法である地方自治法の精神に反します。

「基本計画」について ~生活分野も経済政策も的外れな「戦略」

第9次基本計画では、まず全体を方向づける総論の3に「都市経営の基本戦略」として2つ掲げられています。ここには高島市長の特異な考えに基づく危険な方針が打ち出されています。

「(1)生活の質の向上と都市の成長の好循環を創り出す」は、現実の市民生活に根付いていない、的外れな戦略と言わなければなりません。いま生活の向上と言えば、雇用も社会保障もズタズタに壊されているなか、市民生活は低迷しており、雇用の安定や社会保障の充実・負担軽減によって市民が現在と将来の生活に不安を持つことなく、安心して暮らせるような取り組みが行政に強く求められています。しかしながら、この2年間の市政を見れば分かる通り、高島市長に暮らしの分野の戦略はありません。だから「生活の向上」ではなく「生活の質の向上」「質の高い生活」と言って「質」にすり替えているのではないでしょうか。

また「都市の成長」として掲げられているのは、観光集客や企業誘致によって経済指標を伸ばすこととなっています。しかし、高島市長得意の「稼ぐ都市」などと言って外需頼み、呼び込み型の経済対策では地域経済の真の活性化につながらないことははっきりしています。市内総生産も経済成長率も市民所得も10年前から横ばい、下落傾向、税収も10年間増えていないのが現実です。経済成長というなら、この従来路線を転換し、内需拡大策こそ不可欠です。つまり市民の購買力を高め、地元経済の大部分を占める中小企業の仕事が増え、雇用も安定し、税収も増える、こうした市内循環型の経済・景気対策こそ求められています。ところがこうした観点が欠落しているのがこの戦略の特徴です。

「都市の成長が生活の質の向上につながる」という論点について、具体的にどういうことか、予算議会のわが党の代表質問で市長の考えを質しましたが、まともな答えはありませんでした。

さらに基本計画案は「人材の育成」などと言って特異な目標を教育に押し付けようとしていますが、人格の完成という教育基本法の理念を歪めることは許されません。

新自由主義的発想で道州制ねらう

「(2)福岡都市圏全体として発展し、広域的な役割を担う」は、道州制をにらんで九州の「州都」を狙っていることが透けて見えます。すでに福岡市は「都市州」「メトロ福岡」など打ち出しています。道州制は、行政サービスや人件費を徹底的に削減し、浮いた財源を大企業の儲けのために投資するという「究極の行政改革」として財界が狙っているものです。

基本計画案には「経済成長のエンジンとしての役割を担う国際競争力を持った都市圏を実現していきます」とありますが、福岡市が勝手に決めていいのでしょうか。自分の街のことは自分たちで決めるという住民自治に反する越権行為にあたります。また、九州、日本、アジアにおける福岡市の役割が述べられていますが、どれも主観的で独りよがりの発想です。

そもそも、こうした考えが出てくる素地に新自由主義・構造改革路線があるのではないでしょうか。「都市間競争」「都市経営」などという新自由主義派のお決まりの文句が並んでいることにも表れています。

財政は市民犠牲型を継続、強化する方向

基本計画案は、厳しい財政状況などと言って「選択と集中」「投資の重点化」「アセットマネジメント」を掲げていますが、この路線は、財政難や市債残高縮減を口実に暮らし分野の予算配分を抑制、市民要求にこたえる施策を拒否する一方、ムダな人工島事業は聖域にして手を付けず、市長のお気に入りの事業にもジャブジャブ予算をつぎ込むというものです。必要な公共施設の整備さえも後回しし、「コンパクト化」の名で縮小、切り捨てています。大企業、銀行の利益を保障する一方で、市民には冷酷非情な税・保険料の取り立て、差し押さえでわずかばかりの増収を図ろうというものです。この行革路線はすでに行き詰っています。

この間の異常な職員削減、非正規への置き換え、派遣導入、指定管理者制度や地方独法への移行などによって、福岡市は日本一職員が少なくなっています。これは職員だけの問題ではなく市民サービスにも影響しています。この現状を改めずして「誇りと喜びをもてる組織風土」などと言っても実現できないのではないでしょうか。

辞書にもない「共働」という間違った概念

総論の5には「基本姿勢」が示されていますが、これもすでに破たんが証明されている市民犠牲型の行革路線そのものです。ここでは「行政運営は市民との共働が基本です」と言い、共働とは「相互の役割と責任を認め合いながら、対等の立場で知恵と力をあわせて共に行動すること」と言っていますが、こんなことを言っているのは福岡市だけです。対等などと言っていますが、共働の名で現に福岡市がやっていることは、本来市が行うべき仕事を自治組織や市民に押し付けるなど対立することばかりです。

今の行政運営が市民の納得、共感を得られないのは、人工島事業推進やこども病院移転などに見られるように市民の願いを踏みにじる「独断」市長の姿勢や、国保も介護保険も後期高齢者医療も負担が重いなど暮らしに冷たい姿勢にこそ原因があります。もともと行政と市民は対等ではなく、行政は市民の意思に基づき市民のために働くものです。市民には「責任を果たせ」と言い、「行政は下支え」などというのは地方自治法の精神から見ても間違っています。

現状から出発し、暮らしと権利を守ることを第一にすえた目標・計画こそ必要

市政の目標と計画というなら何よりも現状から出発して、市民の暮らしと権利を守るという地方自治法の本旨の実現をめざすことを第一にすえることです。市民の暮らしの現状を見れば、政令市で最悪水準の国保料をはじめ重い市民負担や、保育所や特別養護老人ホームの入所待ちが解消されないままなど、「暮らしが大変」「将来が不安」という声があふれています。教育費は過去最低レベルに抑制されて教育環境は深刻です。図書館も児童館も文化施設も他都市と比べて貧弱です。今後、人口が160万人を突破し2035年まで増え続けると福岡市は推計していますが、単身高齢者が大幅に増加し、若年層は減少します。

こうした現状と将来見通しに立てば、限られた財源をムダづかいすることなく、福祉と教育の充実、暮らしの応援にしっかり取り組むことです。住宅リフォーム助成制度など地域循環型の経済・雇用対策を行えば、市民所得も向上し、税収も増えます。中長期的には、子どももお年寄りも安心して暮らせるよう様々な施策を展開する必要があります。また、非核平和都市宣言を行い、人口膨張・都市開発を抑制し、原発即時ゼロ・再生可能エネルギーへの転換、自然環境保全が大切です。子ども・青年むけの施設、文化・芸術、スポーツの公共施設を計画的に整備することも求められます。福岡市の「原案」はこうした市民本位の戦略がありません。抜本的に見直す必要があるのではないでしょうか。

日本共産党市議団は議会内外で高島市長の基本構想の問題点をただし、市民本位の市政へ転換させるためがんばります。


以上



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