2012年5月18日
議員の海外視察に関する申し入れ
福岡市議会議長 森 英鷹 様
日本共産党福岡市議団
団 長 宮本 秀国
副団長 星野美恵子
幹事長 中山いくみ
熊谷 敦子
綿貫 英彦
貴職のご活躍に敬意を表します。
5月12日「読売新聞」は、民主・市民クラブの4議員(田中慎介、太田英二、田中丈太郎、調崇史各議員)が議長に提出した海外視察報告書で、書籍やインターネット上の百科事典ウィキペディアなどから文章を盗用していたこと、実際に行っていない地域で視察したように“ねつ造”した部分もあることが発覚したと報じました。
報道によると、報告書について、①バルセロナ旧市街地に関する記述の部分が書籍からほぼ丸写し、②カスク・アンティックとバルセロネータの両地区について実際は視察していないのに視察したように書かれている、③リバプールの都市の概要などがウィキペディアから丸写し、④これらは無断で文章を盗用している、と指摘されています。これに対し当該議員は事実関係を認めています。
わが党が調べたところ、例えば報告書の20ページから1ページ半にわたって記載されている「4.1.バルセロナ市の概要」「4.2.バルセロナの都市開発」の文章は、ウィキペディアの中の「バルセロナ」のページの文章や、雑誌「フォーラム福岡」ホームページの記事と、一部言い回しが違うだけでほぼ同文となっています。全32ページの報告書の中で同様の「丸写し」が何カ所もあります。これらは参考や引用ではなく、出典を示すことなくあたかも自分が見聞きして書いたかのように作った文章であり、報告書としては悪質極まるものです。まさに「コピペ」(コピー&ペースト=丸写し)です。
民主・市民クラブの4議員はすでに修正した報告書を議長に提出したとのことですが、引用元を記載すれば済むなどという軽い話ではありません。報告書の多くの部分が引用だとすれば、著作権侵害の疑いがあります。
また、視察していない場所に行ったかのように書いたこと(ねつ造)は明らかにウソの記載であり、市民を欺こうとしたことは明白です。記載ミスなどという言い訳は通用しません。こうした盗用と捏造の報告書を提出したことは、市民と議会に対する背信行為に他なりません。ところが、当該議員からは何ら釈明もなく、所属会派も何の動きも見えず、このままでは、なぜ盗用とねつ造の報告書を作成、提出したのか、そもそも海外視察の必要があったのか、何も明らかになりません。議会として問題を起こした議員と会派に対し厳しく対処すべきです。
さらに、同様の盗用やねつ造が他の海外視察報告書にもあるのではないのか、疑惑の目が向けられるのも当然です。
この点では、わが党独自の調査によると、2010年6月28日~7月3日にニュージーランド・オークランドに行った福政市民クラブ(当時)の大森哲也、藤本顕憲両議員が提出した海外視察報告書について、数カ所がインターネット上で公開されているウィキペディア記事や研究者の論文からの盗用だということが判明しました。
2008年度以降のすべての海外視察について、改めて調査が必要です。
わが党市議団はこの間、海外視察の廃止を一貫して主張してきました。5年前には一人100万円という高額さ、観光旅行まがいの視察先、インターネット盗用(公明党)など視察報告書のずさんさ、透明性の低さなどの実態を告発しました。これは大きく報道され、市民から「議員特権だ」「視察どころか税金を使った観光旅行だ」「中止すべきだ」と怒りを買い、いったん自粛に追い込まれました。民主・市民クラブや自民党など海外視察賛成会派は、市民の批判をかわすため「上限額の80万円への引き下げ」「報告書の厳格化と公開」などを条件にして、わが党の反対を押し切って海外視察の復活を強行しました。この4年間で4会派30人が海外視察に行き、総額2339万6866円の税金が使われました。しかし、今回明らかになったように、海外視察賛成会派は何の反省もなく同じ問題を繰り返しました。これでは福岡市議会に対する市民の不信は高まるばかりです。海外視察の廃止を主張してきたわが党として断じて看過できません。
税金を使った議員の海外視察のでたらめぶりは全国各地で問題となっています。福岡県議会でも一昨年、「世界遺産めぐり」「ハワイでリムジン乗り回し」などの実態が明らかとなりました。こうした海外視察の必要性そのものが厳しく問われ、廃止・凍結している政令市議会もあります。本市議会においても、海外視察賛成会派の不当さ、不誠実さ、反省のなさが浮き彫りになった深刻な事態を受け、この際、税金を使った議員の海外視察そのものを廃止すべきです。
以上の立場から、わが党市議団は、議長に対し以下の3点を申し入れるものです。
記
- 今回の民主・市民クラブの4議員の海外視察報告書「盗用・ねつ造」事件について、議会として真相究明するため、民主・市民クラブに対し、盗用とねつ造の全容と詳細な経緯などすべて明らかにするとともに、その責任を明確にするよう求めること。
- 過去4年間のすべての海外視察について同様の問題がないか調査し、結果を公表すること。
- 海外視察の廃止について議会として検討すること。
以上