2008年4月21日
吉田市長の「2011グランドデザイン」について
日本共産党福岡市議団
福岡市の吉田宏市長は4月8日、「政策推進プラン」「行政改革プラン」「財政リニューアルプラン」の3つからなる「福岡市2011グランドデザイン」の原案を公表しました。
これは、ムダな大型開発を推進する一方で、借金のツケを市民に押し付け、福祉をきりすてるという重大な内容となっています。
前市政を継承し、市民を裏切る「政策プラン」
「政策推進プラン」は、2003年に策定された「新・基本計画」の第2次実施計画と位置付けられているように、山崎前市長の政策を引き継ぎ具体化するものとなっています。
その特徴は、人工島、都心部、九大学研都市などの都市開発を推進し、空港、港、都市高速道路の機能強化によって「九州・アジア新時代の交流拠点都市」を目指すことを打ち上げていることにあります。
ここには、吉田市長が1年半前、「無駄の多い大型開発や公共事業を生み出す都市の無秩序な膨張をストップ」「市がデベロッパー(開発業者)の役割を果たす時代は終わった」などと前市政を厳しく批判していた姿勢はどこにも見えません。
いうまでもなく「アジアの交流拠点都市づくり」は、桑原元市長が人工島建設に着手して打ち出したスローガンで、山崎前市長が公約違反でこれを継承しムダな大型開発を推進する旗印となってきました。市議会では自民党が中心となって推進されてきたものです。吉田市長がこの「交流拠点都市づくり」という自民党市政の基本路線を継承する姿勢を鮮明にしたことは、市長選挙での市民の審判に逆らい、市政転換を求めた市民を裏切るものに他なりません。
人工島など大型開発を推進
最大の開発・人工島については、必要のない大水深岸壁の建設と埋め立てのほか、売れない土地の処分のための企業立地交付金という税金ばらまきなど、その推進が強く押し出されています。これまでの埋め立て事業に2,700億円もの事業費がつぎ込まれましたが、造った土地が売れずに、3セク・博多港開発の破たん救済だけでも391億円もの税金が投入され、そのうえ市長はこども病院や青果市場など公共施設の移転で税金による土地買い上げや、都市高速道路の延伸など必要のない大型公共事業を人工島に集中させようとしています。すでに破たんした人工島の埋め立てを続ければ、借金と果てしない税金投入の泥沼をさらに拡大することは避けられません。
また「空港機能の強化を図る必要がある」などとして、1兆円のムダづかいとなる新空港に道を開こうとしています。九大周辺を造成して企業を呼び込む「九大学研都市構想」は何の見通しもなく破たんが必至です。都心部の容積率緩和による再開発や新たな幹線道路建設、渡辺通駅北の土地区画整理・再開発など、地場大手企業に便宜を図る都市開発の推進も問題です。
財界の仕事づくりに他ならない大型開発推進を優先する姿勢はきっぱりと改めるべきです。
暮らしの願いに背を向ける
市長は「子ども」重視を打ち出していますが、福祉、教育、子育て政策の内容はすでに予算化している政策を列挙しただけで目新しいものはありません。一方で、増税や国保・介護保険・後期高齢者医療制度などの負担増、生活保護の削減・縮小、障害者自立支援法の応益負担などに苦しむお年寄りや障害者、低所得者に対する負担軽減策や支援策は極めて不十分で、「安心して暮らしたい」という願いに背を向けています。
少人数学級の拡充や児童館の設置など子どもと子育ての願いにもこたえていません。市営住宅や学校など市民に直接関わる公共施設の老朽化についても、「長寿命化」と言って必要な建て替えさえ先延ばししようとしています。雇用不安が広がるなか、雇用拡大は企業誘致や創業支援ばかりで貧弱であり、サービス残業など違法・不法労働を一掃する姿勢は見えません。
環境・温暖化対策も抽象的で具体性に欠けるものです。
借金減らしのツケを市民・市職員に押し付ける「財政健全化」
市長は、現在641億円の市債発行額(一般会計)を毎年度450〜500億円程度に抑制することで借金残高を減らすことを目玉にしていますが、問題はその手法です。
「財政リニューアルプラン」は、差押えなどによる市税・国保料・介護保険料などの収納率向上を進めようとしていますが、これでは低所得の市民がいっそう追いつめられます。受益者負担の適正化や、社会保障など「扶助費の制度見直し」は具体的内容が示されていませんが、福祉や市民サービスが切り捨てられようとしています。
人件費の削減として、今でも政令市一少ない職員をさらに825人も減らす計画ですが、市職員に労働強化と過重負担を強いて、ひいては市民サービスを低下させるものに他なりません。正規職員を派遣や臨時に置き換えるやり方は「官製ワーキングプア」を生み出すものです。市が職員の長時間・過密労働を放置したままでは、いくら「法令遵守」と言っても実効性が問われます。窓口部門など必要な部署の増員を図るべきです。
構造改革路線にしがみつき、行政責任を放棄する「行革プラン」
「行政改革プラン」は「民間能力の活用」「民間でできることは民間にゆだねる」といって、公共施設の管理運営や福祉サービスなどの民営化や民間委託などをすすめようとしています。市民病院「民営化」やこども病院「地方独立行政法人化」は地域医療・不採算の専門医療の放棄につながるものです。公立保育所「民営化」は子どもと保護者・関係者に多大な影響を与えるもので、市長の公約違反だと強い批判の声があがっています。「市場化テスト」や「事業仕分け」は営利と効率の物差しを行政業務にあてはめて民間に投げわたすものです。障害者施設や市民体育館・プール、アミカスなどの「指定管理者制度の拡大・公募化」は、公的責任を果たせず、民間営利企業の儲け口をつくるものです。一部の駐輪場や油山青年の家など公共施設の廃止も打ち出されています。さらに、貴重な「市有地」の売却が進められようとしていますが、これでは保育所や特養ホーム、公園や児童館の設置など地域住民の要望に応えられません。こうした行政の役割と責任を放棄する「行革」は断じて認められません。
そもそも「民間能力の活用」とは、今日の貧困と格差を生み出した元凶である「構造改革路線」から始まったもので、財界の要求にこたえた規制緩和や社会保障きりすての路線は見直しこそ必要であり、破たん済みの路線にしがみつく態度は許されません。
「グランドデザイン」を撤回し、生活最優先の市政へきりかえよ
以上のように、大型開発への税金投入を「聖域」にして、借金財政のツケを市民犠牲に押し付けることを基調にした「グランドデザイン」は、市民の願いに反し、貧困と格差をいっそう拡大するものであり、断じて許せません。
いま市長に求められているのは、国の悪政から住民の福祉を守るという自治体本来の役割を果たし、社会保障改悪や増税、生活困窮と雇用不安に苦しむ市民に救済の手をさしのべ、しっかり支えることに最優先でとりくむことです。そのための財源を確保するためにも、国の地方財政きりすてに強く反対するとともに、財政の軸足を大企業から市民生活へ移すことが求められます。すなわち、人工島など大型開発優先の市政運営をおおもとから改めて借金財政に歯止めをかけ、市民生活と中小業者の営業を応援して個人消費をあたためることに力を注ぐべきです。
わが党市議団は、吉田市長の「グランドデザイン」の撤回を要求し、福祉や教育など市民生活の充実に責任を持つ市民本位の市政運営へ切り替えるため、引き続き市民のみなさんと力をあわせて奮闘する決意を表明するものです。
以上