2007年6月18日
人工島事業・市立病院統合移転「検証・検討中間報告」
についての日本共産党の見解
日本共産党福岡市議団
福岡市は6月14日、「アイランドシティ整備事業及び市立病院統合移転事業検証・検討中間報告」を発表した。今回の事業検証は、吉田市長の公約である「人工島事業の大胆な見直し」の具体化である。ところが、中間報告の内容は市民の期待を裏切るものと言わざるを得ない。
(1)
人工島事業の検証は、これまでの事業計画の一部に疑問や懸念を指摘したものの、基本的には従来の計画を変更することなく推進することを打ち出している。
中間報告は、事業の進捗状況と成果・将来見通しと事業収支計画の検証を行ったうえで、「企業立地の見込みが不透明、市5工区の方向性が不明確、事業収支の安定性への懸念」などを課題として挙げた。これは、わが党が指摘してきた人工島事業の破たんを市が認めざるを得なくなったことを示している。
一方で、中間報告は、今後の検討の方向性として、あくまでも人工島事業を推進することに固執している。「企業ニーズに対応した企業立地誘導手法」は、今全国で問題となっている巨額の税金を大企業につぎ込む補助金の創設に道を開くものではないか。「鉄道、自動車専用道路の構想も含めた交通基盤整備」は、人工島への破たん救済で、採算的にも無謀なムダな大型開発に新たに手を付けることになる。これらは、市民が最も批判している人工島への新たな税金投入に他ならない。
福岡市工区の収支計画の「検証」は、合計141万7千m2もの広大な土地を売却処分する当初計画を何ら見直さず、コンテナターミナル使用料とあわせて最終的に208億円の黒字になることが示されているが、20年間も毎年4万〜9万m2の土地が売れ、しかも処分単価が上がり続けるという見通しは、まさに机上の空論以外の何ものでもない。現実には、人工島の竣工済みの産業用地や香椎パークポート同様、土地が売れずに塩漬けのまま放置され、借金だけが膨らむことになり、結局収支を「安定」させようとすれば公共施設を導入し税金で土地を買うことが不可避となる。そのなかで浮上している青果三市場の人工島移転は12万m2の土地処分が目当てではないのか。
博多港開発工区についても、住宅市街地総合整備事業の導入による道路整備の税金肩代わりを続けることが示されており、無駄な開発推進の第3セクター・博多港開発を税金によって救済する仕組みを温存しようとしている。
さらに、中間報告では、ケヤキ・庭石事件に表れた巨大公共事業・人工島をめぐる政官業の利権あさりの構図に対する検証が全く欠如している。政官業の構造的癒着こそ、巨大公共事業による税金・公金の無駄づかいをやめられない温床となっており、その徹底究明に指一本触れない態度は許されない。
このように、今回の「検証」は「大胆見直し」には程遠いものであり、市長が公約を投げ捨てたものと厳しく指摘しなければならない。
そもそも「アイランドシティを将来にわたり市民の貴重な財産としていくために…検証し」「アイランドシティに対する市民の理解を深めるとともに、まちづくりや土地処分が効率的かつ効果的に促進される方策について検討を行う」と明記されている「検証」の目的が問題である。すなわち、この検証そのものが、人工島事業の縮小や凍結を最初から排除し、事業推進を合理化するためのものであり、その結論を市民に押し付けて「理解」させることを目的にしており、これでは市民の納得は得られない。
市民が求めているのは人工島事業の推進を前提にした「検証」ではなく、抜本的な見直しである。2年前に8万4000人の市民が住民投票を直接請求したように、人工島事業の継続の賛否そのものに市民意見を反映させることである。
そこでわが党は、人工島事業の「検証」を抜本的に改めて市民の期待にこたえるものとするよう、以下の点を提案する。
(1)埋め立て事業は未着工部分(岸壁含む)と未竣工部分の建設工事を凍結すること。そうすれば、建設費を抑制し、土地処分面積も少なくとも約50万m2縮小することができる。(2)税金投入を中止すること。市立病院や青果三市場の移転も含め、すべての破たん救済措置をやめれば、無駄な税金を投入することが避けられる。(3)人工島事業の検証は、住民投票あるいはアンケートなど市民参加と意見反映を徹底すること。
(2)
市民病院・こども病院の統合移転については、人工島移転計画を保留し、現地建替えも含めて再検討することが示された。
これは、市民の強い反対世論とわが党の主張を受けて、既定方針であった移転計画を白紙に戻したものである。
一方で、2病院の民営化も選択肢に盛り込むなど、これまで市が果たしてきた地域医療・こどもの専門医療に対する公的責任を放棄する方向性を打ち出したことは重大である。
市民病院とこども病院はそれぞれ存続させて、統合と人工島への移転はきっぱり断念すべきである。同時に、改善・充実については経営効率の観点だけでなく、市民に必要な医療を保障する自治体病院としての役割と責務をふまえて、検討すべきである。
日本共産党市議団は、人工島のこれ以上の開発と、その破たん救済への税金投入をきっぱり中止させるため引き続き奮闘する決意である。
以上